2017年06月23日 1482号

【手綱も鞍もなしに馬に乗るのか=^国連特別報告者が語る―日弁連共謀罪国際シンポ】

 日弁連は6月9日都内で、共謀罪法案に反対する国際シンポジウムを開いた。同法案に懸念を示す書簡を安倍首相あてに送った国連人権理事会ジョセフ・カナタチ特別報告者とスカイプで結び、1時間半にわたって話を聞いた。

 外務省が「わが国の説明も聞かず一方的な公開書簡」と“抗議”したことについて、カナタチさんは「多くの国の政府の場合、このように重要な法案を提出する際には十分な時間をかけて国民的な討論を行う。事前に私と協議の機会を設けることもある。今回の日本の場合、それがなされなかった」と前置きし、「日本の人びとの利益を守る最も賢明な方策は公開の書簡を送ることだと考えた。私の友人が手綱(たづな)も鞍(くら)も鐙(あぶみ)も使わずに馬に乗ろうとしているとき、説明を求めるよりもまず落馬の危険があることを友人に伝える義務が私にはある」と、プライバシー保護の措置を講じないまま法案制定に突き進む日本政府の姿勢を批判した。

 フロアからの「法律が成立してしまった場合、カナタチさんは何ができるか」との質問には、「日本の人びとには民主主義を享受する権利があるのだから、日本政府に対してまた同じことを指摘するまでだ。特別報告者の制度は人権理事会の仕組みの中でも中心的な役割を果たしている。理事会への私の報告書の中で日本政府の対応に言及し、何年かけてでも丁寧で理性的な方法で圧力を加えていくことになる」と答えた。

 「日本で改憲が議論されている中、プライバシー保護の強化に憲法レベルでどう対応すべきか問いかけたい。いつの日かすべての保障措置が法律に盛り込まれたと酒を酌み交わしながら祝える日が来ることを望む」と会場を沸かせたカナタチさん。日本の市民へのメッセージを、と求められて「どのような社会をつくるのか。それを自ら決める権利、自己決定権を日本の人びとは持っている。政府が何と言おうと、保障措置の実現に向けて一緒に進めていきましょう」と呼びかけた。

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