2017年06月30日 1483号

【共謀罪強行―独裁政権の姿あらわ/「戦争国家」への法整備に狂奔/戦争法制すべて廃止だ】

 安倍政権は6月15日早朝、共謀罪法を強行成立させた。委員会審議を省略する禁じ手さえ使った。報道統制、警察権の濫用、国際的な人権批判への居直り、そして特権・腐敗。戦後最悪の独裁政権は、すでに「戦前」を越えようとしている。戦争する国づくりへの「法整備」は、いよいよ9条改憲に狙いを定めた。戦争法制廃止、改憲許すな、安倍打倒。すべての市民の合言葉として、危険な政権に審判をくだそう。

国会破壊

 参議院本会議での共謀罪法案の質疑・討論は、6月15日早朝6時に始まった。野党議員2人の質問に金田法相らが「回答」ともならない原稿を読み上げ、与野党議員4人の討論で審議終結。発言時間は10分に制限され、わずか90分足らずの出来事だった。

 与党が早期採決に動き出したのは14日の午後。自民党の議院運営委理事は「状況が変わった」とそれまでの態度を一変させた。法務委員会での審議・採決を回避し、本会議に委員長が「中間報告」を行い、すぐさま質疑・討論、採決のシナリオを示したのだ。

 委員会の役割は「予備的な審査機関として、専門的かつ詳細に審査を行う」(参議院ウェブサイト)ことである。公明党の法務委員長は「全会派の協力が得られなかった」と本会議で言い訳し、わずか8分の経過報告をもって委員会の役割を放棄した。審議を拒否したのは、政府・与党ではないのか。

 安倍政権は、会期延長を避けたかった。自衛隊日報隠し問題、森友・加計学園―アベ友問題など、真相が解明されていない政権腐敗問題は山ほど残っている。これらの追及を逃れるために、委員会審議省略という禁じ手を使うとは、国会を「国権の最高機関」ではなく、政権のための採決マシーンに貶(おとし)めるもの。立法府が行政府をチェックできない状態は、まさに、安倍1人が決める独裁体制だ。

世界が注目

 この共謀罪成立は国際的にも注目されている。英国ガーディアン紙は「市民の自由を脅かす恐れがあるにもかかわらず“凶暴な”対テロ法を可決」との見出しで報道。「警察の監視が拡大し、第二次大戦前および戦中、国体を脅かすとして政治的団体を捜査する広範な権限を行使した“思想警察”と比肩する」との批判を紹介している。共謀罪による監視の合法化は、警察が戦前の特別高等警察に匹敵する力を得ると指摘している。米国通信社ブルームバーグは「安倍の平和憲法改正という長年の野望を前進させる道を開くことになる」と論評した。

 海外のメディアの指摘を待つまでもなく、安倍独裁政権がめざすものは戦争国家づくりだ。第2次安倍政権発足から、5年足らずの間に、数々の戦争のための法律(戦争法制)がつくられてきた(表1)。



 共謀罪法は、戦前の治安維持法そのものだ。「一般人は無関係」とする答弁も共通する。治安維持法は、「国体を変革(天皇制の否定)し又は私有財産制度を否認すること(共産主義を想定)」を目的とする結社を取り締まるための団体規制法として1925年成立した。「濫用の恐れはない」と当時の政府も繰り返した。

 だが権力は、共産党員ではない周辺の人びとに弾圧の手を広げたのだった。中国侵略の口火となる満州事変後の33年、長野県の教員団体が大量検挙された。共産党系と目された日本労働組合全国協議会(全協)は「国体変革結社」とされ、根こそぎ検挙。文化団体などこの年、検挙者数は最高となった。

 共謀罪の対象を限定したという「組織犯罪集団」の定義はない。「その周辺者」は無限定だ。戦争政策に反対する市民に「犯罪の嫌疑」をかけ、監視・調査を正当化する。戦争を止める力は奪われていく。負の歴史から学ばねばならない。「二度と繰り返してはならない」と誓ったことを忘れてはならない。

「戦前」を越える

 安倍が強行してきた「戦争法制」は、「戦争する国」だった戦前といかにも似ている。戦時に天皇の直属機関として設置され、軍への指令を行った大本営。この戦争遂行の司令部は、首相権限を強化した国家安全保障会議が担う。

 戦前、不都合な情報を統制する情報管理体制をつくった国防保安法(41年)。軍機保護法(37年改悪)が軍事機密に限定していたものを政治的に重要な意思決定過程の情報に拡大した。「国家への無条件の忠誠心を強いる役割を担った」(纐纈厚『監視社会の未来』)。これには共謀罪が導入されていた。

 安倍政権が真っ先につくった秘密保護法は軍事機密に限らず、外交や国家安全保障会議などの主要な会議情報を秘匿でき、共謀、扇動などの処罰規定も導入されている。

 その他、報道機関に対する統制、教育勅語を肯定する道徳教育など、安倍政権が行っている一つ一つが、戦前に学び、その状況を強化再現しているとしか思えない。

 では何をすべきか。「怪文書」発言。人格攻撃。「調査の必要なし」との居直り。その一つ一つが市民の怒りをかきたてた。文科省は「国民の声」を聞いて「再調査」せざるを得ず、その結果さらに疑惑を深めた。「アベ友」には特権を与え、市民には犠牲を強いる腐敗政権の実態を徹底的に暴き、広げることだ。人権理事会特別報告者の公開書簡は国際的に通用しない安倍の虚構を暴いた。報道統制を打ち破る真実の拡散を市民との対話で。これが独裁政権を倒す道だ。特定秘密保護法、戦争法、共謀罪法など戦争国家を支える法の廃止、9条改憲阻止の力ともなる。

  
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