2017年06月30日 1483号

【「月桃の花」歌舞団 ガマ人間あらわる 岡山和気公演 200人で大成功 人間らしく本音が言える社会に】

 6月10日、岡山県和気町での、フクシマ・オキナワとつながる希望のミュージカルコメディ『ガマ人間あらわる』は多くの移住者・避難者をはじめ約200人が参加。公演を担った実行委員、歌舞団から報告が寄せられた。

共感の涙から出発 思いを代弁し伝えてほしい

 まず今回の和気公演が盛況のうちに無事開催されたことに感謝します。大阪から何度も和気町に足を運んでいただいた歌舞団のメンバーの方々に感謝します。

 皆様、お疲れ様でした。

 私たちが東日本大震災を機に、東京から和気町に移住して4年8か月になります。

 震災後、2人の息子が相次いで体調を崩し、様々な不安を抱えたまま暮らすより、安全な場所でのびのびと子育てがしたいと思い、母子移住。和気町には同じような思いで移住したお母さんたちが多く、不安をぶちまけ、一緒に泣き笑いしているうちに恐れや不安は解消されるように感じていました。

 しかし、去年4月の姫路公演を見て、子どもの泣くシーンで涙があふれ、最後まで止まりませんでした。自分自身、気が付かないうちに心の奥に感情をしまいこんでいたようです。と同時に、和気町に移住したお母さんたちにも『ガマ人間あらわる』を観てほしいと感じ、「今度はぜひ、和気で公演してください」と声をかけていました。

 1年2か月後に和気公演が決まった時、嬉しかったけれど、内心は「大変なことになった!果たしてこの重く難しいテーマのミュージカルにどれだけの人が来てくれるだろう?」と不安になりました。

 「ガマ」の持つ様々な意味を説明して興味を持ってくれた人に自分が感じたことを伝えていきました。特に観てほしかったのは、長い間移住するかしないか悩み、悩みぬいた末に、最近ようやく移住したお母さんたちです。

 当日、和気やすらぎの泉合唱団「結音(むすびね)」に参加するお母さんたちも含めて、たくさんのお母さんたちが来てくれました。公演後の交流会には8組の移住者が参加。自己紹介と感想を話し始めると「主人公ののぞみ≠ニ自分が重なって見えた。あれは自分だと感じた」「内容的にかなりキツく、こたえた。まだまだ消化できていない感情に気付いてしまった」と当時の体験を辛い感情と共に吐き出すように話してくれました。

 そして、私たちの思いをぜひ、今度の郡山公演で代弁して伝えてほしい!と。『ガマ人間あらわる』を通して、移住したお母さんの気持ち、様々な事情で移住できないお母さんの気持ちがお互い切なくなるけど、痛いほど分かる。分かるからこそ、子どもたちの未来のために一歩踏み出してほしいと思います。

(公演実行委員・吉永由加里)

当事者の感動が 地域のつながりを作る

 昨年の姫路公演を見ていただいた和気町に移住した方の涙の感想から始まった岡山和気公演は、6月10日約200人の参加で大成功した。

 ユース交流会で、広島から来た大学生は「関心をもつ大学生がすごい少数で、知るということがすごい大事だと思った。舞台を観て、まるで自分がその立場にあるような気がして考えることができた」と。「素直≠ェ愛国心で歌うところなんかは『あ、俺もそうなりそうだな』と思った」と話すのは岡山の大学院生。

 昨年末に和気に母子避難してきたばかりの女性は「看護師の仕事をしているのですが、首が座ってない子どもを自転車で保育所から連れて帰るとき、虐待しているのではと悩んだ。職場ではミュージカルであったようにコンサルとかされるんですけど、何のコンサルか、もう分からない。まさにミュージカルが自分の状況と重なって…。『私の命は私のものだ』という原点がなくては生きていけないと思った」と涙ながらに語った。

 実際に体験し、心の中に閉じ込めていた思いがミュージカルの内容と重なり、どんどんと本音が語られた。

 このように、避難者をはじめ当事者の共感と感動が公演を広げる力となり、その公演を通して本音を言い合えるつながりが広がっていくということに気づき、確信した。ガマ人間によってバラバラに分断され孤立させられる社会ではなく、人間らしく、本音が言える社会にしていくためにも、『ガマ人間あらわる』公演を全国に広げたいと思った。

(「月桃の花」歌舞団西日本公演担当 廣田和也)

◆ミュージカル『ガマ人間あらわる』郡山公演
7月1日(土)15時開演(郡山市中央公民館多目的ホール)チケットの申し込み、問い合わせは info@gkabudan.jp



ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS