2017年07月07日 1484号

【MDS集会 戦争・新自由主義の安倍内閣打倒 佐藤和義委員長基調講演(要旨) 2020年改憲を阻止しよう】

 MDS(民主主義的社会主義運動)集会が6月21日東京、25日大阪で開催された(関連記事4・5面)。安倍内閣打倒、2020年改憲阻止に向けた佐藤和義委員長の基調講演(東京)要旨を掲載する。

共謀罪は2020年改憲のため

 6月15日朝、共謀罪法が参院で強行採決され、憲法違反の法律が成立した。委員会審議を打ち切り、本会議で中間報告、採決という反民主主義的手法で採決された。まさに共謀罪の本質を示すものだ。

 政府は、共謀罪が対象とするのは「組織的犯罪集団」であり、一般人は対象外と説明した。だが、元警察、検察関係者も市民運動を監視することが目的であることを認める。元北海道警釧路方面本部長原田宏二は、「一般人」の定義を「政府のやることに反対しない人」とし、「警察が脅威になると判断したら監視対象となる」(6/15朝日)とする。

 ある人が組織的犯罪集団に入っているかどうかは捜査機関が判断する。すべての市民が、すべての団体が対象だ。

 安倍政権は、自らの戦争と新自由主義政策が格差を拡大し、市民生活を圧迫していることを知っている。有権者の2割未満の支持しか得ていないにもかかわらず、さらにグローバル資本のための政策を強行する。社会保障切り捨て、軍事力強化、沖縄新基地建設、原発再稼働、改憲を進めようとしている。この政策への市民の反発を抑える手段として共謀罪を成立させた。

 例えば改憲反対署名を集めようと市民グループが相談する。警察は、犯罪の疑いがあるとして捜査をすることができる。聞き込みだけでも日常の市民生活にはダメージがある。脅すことで沖縄基地撤去、原発再稼働反対、憲法改悪反対運動を抑え込もうとする。

 森友、加計(かけ)疑惑は政権中枢が安倍と取り巻きの利益追求のために総力を挙げたものだ。

 大学設置の規制は大学の水準を維持し将来の卒業生に不利がないようにするものだ。安倍首相は6月16日参院予算委で「これからも先頭に立ってあらゆる岩盤規制に挑戦する」と述べた。安倍らは私的利益のために岩盤規制の挑戦≠ニして、特区を利用した規制緩和の下に、市民生活の維持のために作られた企業への規制を緩和することでグローバル資本の期待に応え、同時に自らの直接的利益を狙ったのである。

9条死文化の安倍改憲

 安倍首相は5月3日付読売新聞で2020年改憲施行、憲法9条1項、2項を残し、自衛隊を明文で書き込むとの提起をおこなった。

 「9条については平和主義の理念はこれからも堅持していく。そこで例えば、1項、2項をそのまま残し、そのうえで自衛隊の記述を書き加える。現実的に私たちの責任を果たしていく道を考えるべきだ。それは国民的な議論に値するだろう。私の世代が何をなし得るかと考えれば、自衛隊を合憲化することが使命ではないかと思う」

 この安倍の提案は、安倍のブレーンである日本会議のメンバーによって昨年から主張されていたものである。日本政策研究センター研究部長小坂実は「9条2項は、今や国家国民の生存を妨げる障害物と化したと言っても過言ではない。速やかに9条2項を削除するか、あるいは自衛隊を明記した第3項を加えて2項を空文化させるべきである」(5/28赤旗)と主張した。

 これを受けて自民党憲法改正推進本部は6月6日改憲論議をスタートさせ、年内に取りまとめる方針である。

 この提案は国防軍創設を求めた自民党改憲草案とは明らかに異なる。石破茂元防衛相は「2項には『陸海空軍その他の戦力は保持しない』『国の交戦権は認めない』と書いてあるわけでしょ。仮に3項に『前項の規定にかかわらず』って入れれば、死文化になる。2項と3項が全く違う。一種のトリッキーな、少なくとも真摯な立法姿勢とは思えない」(6/7朝日)と批判した。

 9条3項追加提案の本質は、2項の削除、国防軍創設という自民党改憲草案では国民投票で勝てないとみて、9条の死文化を目指すものである。

 安倍提案について、河野克俊統合幕僚長は「一自衛官として申し上げるなら、自衛隊の根拠規定が憲法に明記されることになれば非常にありがたい」(5/24毎日)と述べた。菅官房長官は個人的感想としたが、防衛省内部背広組幹部すら「個人的感想という言い訳は許されない」(5/28朝日)と批判している。経団連は「年内に改憲についての提言を行う」といい、連合は「改憲対応の議論を開始する」という。安倍応援団がうごめきだしたといえる。

 2020年改憲阻止に向けて大きく強く広く闘いを組織する時である。


支持低下と党内離反

 安倍は共謀罪強行、森友、加計疑惑で墓穴を掘りつつある。安倍は国会で嫌な質問をされると、すぐ安倍内閣の支持率は高い、民進党は支持されているかと反論するが、それが言えなくなりつつある。

 安倍内閣支持率は各調査で激減している。もっとも注目すべきは毎日新聞世論調査だ。内閣支持率が36%で前回より10ポイント減、不支持率44%で9ポイント増と支持、不支持が逆転した。支持を不支持が逆転したことは安倍内閣のでたらめな対応への強い市民の怒りを示すものである。

 この世論調査以前にも安倍への異論が出ていた。アベノミクスに反対する「財政・金融・社会保障制度に関する勉強会」(会長・野田毅前党税制調査会長)が5月16日に続いて6月15日にもたれ、野田聖子、石破茂、中谷元などが参加し、異次元の金融緩和への公然たる疑問が出された。

 さらに麻生派が山東派、谷垣グループの一部を吸収し60人程度の党内第二の派閥となる。安倍に対し揺さぶりをかけようとするものである。

 共謀罪反対闘争は集会、国会前参加者数、署名数、闘いの全国化の点で戦争法反対闘争を下回った。安倍内閣のメディア支配のもとで数の力に何を言っても無力だとのあきらめを広げられた。安倍内閣の一切まともに答えない国会答弁、なぜ安倍支持率は下がらないのか≠ニのいら立ちの中で、多くの市民は運動に踏み込むことにためらいがあった。市民と野党共闘は維持しているが、闘いの勝利の展望として多くの市民が納得する水準には達していない。連合の圧力のもと原発廃止すらなかなか決められない。

 もちろんこれが権力資本の策動であることは間違いない。しかし共謀罪反対闘争、森友、加計疑惑追及の積み重ねの中で、共謀罪法案通過を許したが安倍内閣を追い込んだ。森友、加計問題は敵の失策ではない。戦争・新自由主義路線の必然的帰結である。




新自由主義路線の敗北

 朝日新聞5月の世論調査でも「2020年改正をめざすべきだ」が13%に対して、「時期にこだわるべきではない」が52%と安倍の改憲路線に大きな支持はない。毎日新聞調査でも安倍改憲案への反対が賛成を上回り、「改憲を急ぐべきでない」が圧倒的多数を占めた。安倍の支持が激減する中で安倍を追い込み、打倒することは可能である。

 安倍への批判は国際的に強まっている。国連人権理事会ジョセフ・カナタチ特別報告者は「法案が成立すれば、法の広範な適用によってプライバシー権と表現の自由が過度に制限される可能性がある」と指摘した。デービッド・ケイ特別報告者の対日調査告書は「メディアの独立性が重大な脅威にさらされている」「(特定秘密保護法は)知る権利の保護範囲を狭めている」とし、山城博治沖縄平和運動センター議長の逮捕・長期拘束を「容疑事実に比して不適切。反対意見表明の自由を奪う」と批判した。

 英紙ガーディアン(6月15日)は「国連が市民の自由を奪うことになりかねないと警告を出したにもかかわらず、日本はテロなどの重大犯罪を企てたり共謀することを取り締まる論争を呼んでいる法律を制定した」と報道した。

 安倍、外務省は反論や意識的な誤訳をしているが批判に答えることはできていない。

 安倍の末路は国際的にも示されている。イギリス総選挙の結果はグローバル資本主義に対する強い市民の批判を示した。メイ保守党は圧勝する予定が単独過半数を割った。労働党は議席を大きく伸ばした。コービン労働党は青年層の強い支持を得た。ユースクェイク(若者の激震)といわれる変化をもたらした。特に大学授業料無償化政策が支持された。年間9千ポンド(約126万円)を無償化するために、総額95億ポンド(約1330億円)の支出を掲げた。また最低賃金を2020年までに時給10ポンド(約1400円)にするとした。さらに無料の学校給食、安価な公共住宅の増築、国民保健サービスへの予算増額、鉄道再国有化を掲げた。財源は大企業、富裕層への課税強化で調達することとした。18〜24歳投票率は66・4%(前回43%)と大幅に延び、18〜34歳の63%が労働党に投票した。コービンの「若者は、誰もが同じチャンスを与えられるべきだ」(6/11朝日)との主張が支持されたのである。

 平和の問題についてもコービンは明確であった。市民から「核攻撃が切迫していたらどう対応するか」と問われて「どんな脅威にもまず交渉と対話で対処していく」(6/11赤旗)と答えた。

 グローバル資本主義に真っ向から対決することでコービン労働党は大きく前進した。

 フランスは右翼排外主義者を阻止、韓国は大統領を罷免し、民衆の闘いが情勢を規定している。アメリカでは排外主義者トランプへの批判が強まっている。全世界で安倍の掲げる戦争・新自由主義路線が敗北しつつある。安倍の命運を我々が決める時である。
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS