2017年07月07日 1484号

【第2回 尊厳ある暮らしを守る集い 当事者の話から尊厳を考える 7・30ZENKO介護分科会へ】

 6月18日、東京・足立区北千住で、2回目となる尊厳ある暮らしを守る集い≠開催しました。

 今回は、若年性認知症の当事者を迎えてお話を聞き、合わせて東京都の委託で相談と支援を行っている方からのお話を通して、尊厳を守ることの意味を考える企画を取り組みました。多くの事業所からの実態が報告され、財源不足を理由にした報酬引き下げを止めて、あらためて介護報酬を引き上げることの必要性を確認した集いとなりました。

若年性認知症の訴えから

 当事者のSさんは56歳。働く場所を求めて支援センターを訪ねました。そこで今回一緒に集いに参加してくださったKさんと出会い、Kさんが勤務していた小規模多機能事業所で就労することになりました。発症して初期の人達は、認知症の病識(自分が病気であるという自覚)は強く就労相談が多いとのこと。支援センターはオープンして7か月で3名の就労支援を行いました。

 Sさんは、大学の教授で臨床検査の仕事や生化学の授業をしていました。次第に物忘れを感じ、テレビを通して認知症テストを行い、認知症を認識したのです。現在就労している小規模多機能事業所では、草取り、野菜収穫、風呂掃除、スポーツレク等を担い、もっとやれることを拡大して貢献したいと意欲的です。Kさんは「就労を受け入れてくれた事業所は真剣に耳を傾けてくれた。本人の可能性を信じてくれた」と話しました。「働けない=役に立たない人間」と考えることは、人としての尊厳を問う問題であると強く訴えていました。今後増えていく若年性認知症を支援する視点を確認した講演会になりました。

介護保険制度は不十分

 私の事業所で最近、若年性認知症の方を受け入れました。Sさんと違い発症後6年が経過し、認知症は進行していて様々な援助が必要な状況です。小規模多機能の通い、訪問、泊まりのサービスを状況に合わせて提供して支えていますが、家族の介護疲れのもとで、本人の尊厳を守った関わりを進めるには現在の介護保険制度では不十分であることを痛感しています。

 若年性認知症の施設での受け入れは50代までの人は少ない状況です。周辺症状が生じている場合の対応は人の配置に尽きます。若年性認知症や新規の高齢者の利用でも、スタッフの人数を考え受け入れを調整するのが現状です。

報酬引き下げに反対

 今回の集いでは、参加したほとんどの事業所から発言をいただきました。

 お泊まりデイサービスの事業所の方は「来年度から週5日以上泊まりがあるとスプリンクラーを設置しなければならず、消防署が何度も来ている。何百万円もかかるのに助成金がないため泊まりは減らしている。しかし要望は多い。ショートステイは手続きが大変で、お泊まりデイは簡単にできる。泊まりをなくしてデイサービスのみにしたら現状の報酬単価では厳しいのに、来年度はまた下げられそうな動きだ」と訴えました。

 小規模デイサービス事業者は「10年前にオープンした。同じことしているのに報酬は月に20万円近くダウンした。介護度は軽くなっていく傾向を感じる。報酬を上げてもらうことは切実だ」「認知症加算を取るために研修に行かせた。しかし医師の意見書が軽く評価され請求できなかった」との発言が聞かれました。

 小さな所にしかできないケアを担っているにもかかわらず、厚労省は報酬ダウンを狙っています。小規模経営の事業所がつぶれないように強く反対しなければなりません。また提供したケアで自立度を上げた事業所には介護報酬をアップする改定が進められようとしています。こうした一面的な評価ではなく、高齢者が尊厳ある生活ができる観点から何が必要かを示して対抗しなければなりません。

ワンデー厚労省交渉へ

 7月28日には2017ZENKOのワンデーアクションとして厚労省要請行動を行います。この間取り組んでいる署名を拡大し、みんなで厚労省に要求をぶつけたいと思います。そして30日にはZENKOの介護分科会を開催します。各事業所の取り組みを交流し、これからの運動方針を話し合いたいと思います。

(東京・足立区 NPO法人くまハウス 大久保信之)



ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS