2017年07月07日 1484号

【みるよむ(444) 2017年6月24日配信 イラク平和テレビ局in Japan イラク農民の怒り ―水を返せ!】

 イラクの首都バグダッド近郊の豊かな農業地帯は「バグダッドの収穫かご」と言われてきた。ところが今、水が供給されないために作物も作れず、家畜も育てることができない状態になっている。サナテレビは2017年4月、現場に入って市民と農民の怒りの声を伝えた。

 サナテレビが映し出す現在の「バグダッドの収穫かご」では、草木もまともに生えていない荒廃した土地が続く。市民は「6年間も7年間も干ばつで全部やられている。まったく不毛の砂漠になってしまった」と言う。

 ここは、かつては7000家族が住んでいた農業地帯だった。農民はみな家1軒と5ヘクタールの農地を持ち、家畜もたくさん飼っていた。豊かな農業が行われていた。それが、水がないために農業が成り立たなくなってしまった。

 それでもこの地域の農民は様々な努力を行ってきた。24メートルもの深さの井戸を掘って農業用水を確保しようとした。ところが、出てきた水は塩水で、家畜にも作物にも生活用水にも使えない。

 結局農業に見切りをつけた多数の農民は、家畜も売り払ってしまった。都市部に移り住み、建設現場やタクシー、じゅうたん織りなど全く別の仕事につかざるを得なくなったのだ。

 一体なぜこんなひどい状態に追い込まれているのだろうか。ある市民は「ギャングども、マフィアどもがイラクを支配しているからだ」と語る。インタビュアーのサジャド・サリームさんは「有力者が何の規制もなく土地と水路を支配して水が供給されない」と指摘している。

 地域の農民は灌漑農業省当局のところに行き、「介入して解決してほしい。何の支援もないから私は何もできない」と要求しているが、行政当局は何の対策も打っていない。

 世界的な大河であるチグリス・ユーフラテス川が流れるイラクでは、川の水を有効に使った灌漑農業で何千年も豊かな農業を営んできた。水自体はバグダッド周辺には十分存在する。

 だがイラク政府は、農業用水が止まっても、地下水が汚染されても、何の対策も打たない。サナテレビは、農民の怒りを伝えることで不当な政府に声を上げていこうと呼びかけている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS