2017年07月07日 1484号

【沖縄平和運動センター議長 山城博治さんが講演 国連人権理事会で感激と勇気 世界は見ている しなやかに大胆に】

 6月15日、ジュネーブの国連人権理事会で日本政府の沖縄弾圧の不当性を訴えた沖縄平和運動センター議長・山城博治さんが6月22日、都内で講演した(主催は月刊誌『DAYS JAPAN』)。「共謀罪は絶対廃止」をテーマに山城さんとVFPJ(平和を求める元自衛官と市民の会)の井筒高雄さんが語った会場には約400人が詰めかけた。(3面に関連記事)

人権の擁護者

 山城博治さんは冒頭、国連の演説の際流した1分間ビデオを紹介し、『We Shall Overcome』を歌い始めた。参加者も声を合わせる。

 「公式には罪を犯した刑事被告人の立場の私がなぜ国連で発言するのか、ネットの世界では大騒ぎだ。ジュネーブでは人権の擁護者≠ニして扱ってもらい、大きな感激と勇気をいただいた。人権理事会の高等弁務官事務所スタッフに『決してみなさんを一人にはしない、ずっと注視している』と迎えられた。世界は広いし、見ている。この政府の独りよがりで人びとの痛みを痛みともしないで自分だけがのうのうと生き、大きな罪を起こしても開き直るような恥ずべき事態を世界は見ている。ぜひめげないで、気持ちを大きく持って、しなやかに、そして時には大胆に進んでいこうではないか」

 会場からの大きな拍手に山城さんは続けた。

 「安倍首相は憲法があるにもかかわらず集団的自衛権に踏み込むとか、9条1項2項があるにもかかわらず3項に自衛隊を明記しようだとか。でも彼らがやろうとしていることが確実にメッキが剥がれ、おごりが自らを押し倒す状況が生まれている。光が差してきたと思えないか。共謀罪が稼働できないような私たちの監視と運動の中で、民主主義が圧殺、破壊されようとしている戦後を守りきろう」

 政府の弱さを指摘する。

 「私の国連スピーチに日本政府は早速反応した。ネット上では日本一のテロリスト≠ニ言われる私が国連で発言できるのは、沖縄・共謀罪・福島の話をする市民のネットワークの力が後押ししたものだ。政府が相手せざるを得ないまでに追い込んだということだ。国連特別報告者デービッド・ケイさんは、中国・北朝鮮の人権状況を声高に言う日本政府が、自らが指摘されると『反日』呼ばわりにすることや自由・人権を縛ろうとする悪辣な意図に、大きな懸念を表明している。国際社会の力も借りたいというメッセージも送ろう。私たちは愛国者という言葉は使わないが、奴らのグロテスクな『愛国者』たちよりよほど国を、地域を愛し、子どもたちの未来を憂えているではないか」

志を継ぐ

 6月12日、大田昌秀元県知事が死去した。山城さんは志を継ごうと訴えた。

 「大田元県知事が亡くなられた。戦争に行ってたくさんの学友を失い、戦後の自分の人生を沖縄戦とは何であったかの研究に捧げられた。その成果を行政の場で活かそうとした知事だった。代理署名を拒否し、国から訴えられた。被告にされた知事は、日本で大田さんが最初、2番目が今の翁長(おなが)知事になる。あの戦争から生き延びた私たちは何をなすべきか、ずっと問いかけた人生だった。その志を継いでがんばっていきたい。翁長知事も大田さんの思いを反芻(はんすう)しながら、自分は何をなすべきなのか、今苦悶されていると思う。沖縄の政治家は、歴史の重み、人びとの期待、政府からの圧力に耐えてどこかに活路を見出そうとしてきた。翁長さんにはどうか勇気を持って決然と決意するときは決意してほしい。その時、県民はあなたを見殺しにはしないだろう」

歌とともに

 講演の最中も『今こそ立ち上がろう』など次々と歌が飛び出し、会場は一体となる。

 「歌はどんな場面でも、いい。拘置所に5か月捕まっているとき、自分を支えることが必要だった。絶対あんな奴らに負けるか、負けるか≠ニ思ってはきたがやはり辛い。歌ったり、拘置所の外から励ましの歌が聞こえると元気になった。辺野古では最初、地元の歌に始まり、替え歌が作られ、今や『辺野古歌集』ができるぐらいだ」

 山城さんは今後について「サンゴの海は埋め立てた後も時間の経過とともに、サンゴは死滅し岩石は砂になって沈下する。5年もすると埋立地はまた海に戻ってしまう。政府は大幅な計画変更をするはずだ。しかし翁長知事や稲嶺名護市長が変更を認めるわけがない。基地建設するには、知事・市長の首をすげ替える以外にない。知事・市長への攻撃が強まるだろうから皆さん支えてほしい」と訴え、同時に展望を語る。

 「文科省の役人たちが今どうにかしようと必死に抵抗している。官僚支配を批判してきたが、官僚たちにエールを送ろうと思ったのは初めてのことだ。初めて国民とつながろうとしている官僚の皆さんの勇気に敬意を表したい。国を支配し好き勝手なことをやってきた過去は問わない。未来のためにともにがんばろうではないか。今大事なことは安倍一強を許さないために団結すること、オール沖縄が見せたように。小異は捨てろとは言わない。小異は残して、今何が問われているのか、その一点に絞って選挙戦を闘えば必ず勝てる」

 そして、こう結んだ。

 「今私たちは非常に微妙な危なっかしいところにいる。しかし、寝てもおられないぐらいのワクワクした時代を生きているのではないだろうか」



 
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