2017年07月14日 1485号

【みるよむ(445) 2017年7月1日配信 イラク平和テレビ局in Japan 冷房が使えない バグダッドの小学校】

 首都バグダッドには、教室に子どもがあふれ、冷房がとめられている劣悪な環境の小学校がある。2017年4月、サナテレビはそうした小学校の一つを訪れた。

 イラクでは一番暑い季節には気温が摂氏50度を超えるときもある。ところが、この小学校では、冷房装置はあるのに夏になっても動いていない。

 教員によると、電気料金3600万ディナール(約340万円)を滞納しているために電力省が電気の供給を拒否しているという。

 冷房だけではない。イラクは真冬はかなり寒くなる。だが、この学校には暖房はまったくない。その上、校舎の窓ガラスが割れたままの部分がある。

 教室の数も足りない。番組でも、一つの教室で50人もの子どもたちが勉強している場面が映し出される。行政当局は、子どもの健康状態や学習権の保障などまともに考えていない。サナテレビは「生徒にとっては、学校に通うことは悪夢のようだ」と批判する。

 教員の労働条件は劣悪だ。教員は30人いるが、教員用の部屋は倉庫を転用したもので9平方メートルしかない。いすに座るだけでも10人も入れないだろう。

 ある教員は、学校に通勤するために通る「道路全体に汚水があふれ出ている」と状況を訴える。自治体当局に道路の修理を訴えても「この自治体のものではない」と相手にされない。「苦情を言っても砂を投げ込むだけ。雨が降ってぬかるみになり、もっと通りにくくなった」と言う。

 こうした実態―とりわけ電気供給問題には日本が関係している。日本政府はイラクの電気事情を改善するためという名目で2014年に202億円、2015年には537億円もの借款をアバディ政権に与えた。しかし、映像に示されるように、そんな資金は何の役にも立っていない。腐敗政権を支える汚職に流し込まれているに違いない。

 イラクの学校では、炎熱下でも冷房が使えず教室も不足している。それは、政府の緊縮政策で教育や福祉の予算が削られているからだ。サナテレビは、アバディ政権下の学校の実態を明らかにし、教育や生活改善の要求を突きつけようと呼びかけている。生活改善を要求し腐敗政権と闘うイラク市民と連帯したい。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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