2017年07月14日 1485号

【ミリタリー 再び暴かれた「辺野古唯一」のうそ 在沖縄海兵隊は無条件撤退だ】

 政府の言う「辺野古が唯一」に何の根拠もないことが、米海兵隊トップの言葉で改めて明らかになった。

 5月24日、米上院の国防予算案公聴会で、ハワイ選出の議員の質問に対し、ネラー米海兵隊司令官が「在沖海兵隊のグアム移転計画の見直しを検討している」と明言した。質問は、「訓練施設建設の遅れ」「実弾射撃場建設が予定されるテニアン島などでの環境問題」などについてのもの。司令官は「テニアン島や他の島々でも環境問題が残っている」ことを含め「他の場所での訓練を検討する選択肢はある」など、グアム移転計画に様々な支障が生じていることを認めた。

「地理的優位」根拠なし

 米軍自身による「見直し」論の背景の第一は、朝鮮のミサイル技術「進化」でグアムまでもその射程圏に入りつつあることだ。



 そもそも、在沖縄海兵隊グアム移転を含む米軍のグアム、ハワイ以遠への前方展開基地等の後退戦略は、中国のミサイルが沖縄を完全に射程圏に収めていること(中国は650kmの距離にある沖縄に到達可能な弾道ミサイル80基、巡航ミサイル350基を保有)に起因していた。「沖縄の負担軽減」などではなく、米軍基地沖縄集中による大きなリスクを避ける純軍事的理由によるものであった。

 加えて朝鮮のミサイル開発「進化」。「リスク分散」しても脅威にさらされるとすれば、米軍にとって、在沖縄海兵隊のグアム移転計画の見直しは必然である。

 今回のグアム移転「見直し」報道で、改めて浮き彫りにされたのは「辺野古が唯一」のデタラメさである。

 政府のみならず司法もこのデタラメな言説をたてに「辺野古新基地建設反対」の沖縄の民意を踏みにじってきた。2016年9月の辺野古埋め立て承認取り消し訴訟の高裁判決は、国の言う「沖縄の地理的優位性」を追認。「我が国で北朝鮮の弾道ミサイル『ノドン』の射程圏外となるのは沖縄などごく一部」「県外移転はできず普天間の危険除去には辺野古しかない」と司法として「異例の踏み込み」を行い、翁長(おなが)知事の承認取り消し処分を違法とする判決を言い渡した。中国のミサイルだけでなく、朝鮮のミサイルも昨年2月、沖縄本島と先島上空を通過している。今年3月の弾道ミサイル同時発射を「在日米軍基地攻撃の訓練」と朝鮮中央通信も報じる中で、「沖縄の地理的優位性」などもはやどこにも存在しないことは明白だ。

環境破壊ノーの住民

 「見直し」の第二の背景は、テニアン島などでの訓練場確保が困難に直面していることだ。

 北マリアナ諸島での兵器・実弾射撃・大規模機動訓練一体となった高度な訓練施設建設がグアム移転に伴う米軍の計画だ。だが、こうした大規模訓練場は大規模な環境破壊を伴う。

 テニアン島、パガン島では2016年7月、地元市民団体が海軍を相手取り国家環境政策法違反で訴訟を起こした。米政府が「著しい影響を人間環境に与える活動」を実行する前に、環境影響評価書作成と公表、代替案の検討、住民の手続き参加を義務付ける米国の国家環境政策法。沖縄でのスルーも許されないが、自国となれば無視ははるかに難しい。明らかにグアム移転は行き詰まっている。

 グアム移転が困難なら、在沖縄海兵隊は無条件撤退しかない。グアム、テニアンなど地元住民と連帯し、この声を大にしよう。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会

 
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