2017年07月21日 1486号

【議会を変える マイナンバー漏洩 国は猛省を 京都府向日(むこう)市議 杉谷伸夫】

 毎年5月に市町村は、給与から天引きする住民税額の決定通知書を使用者に郵送しますが、今年からその通知書(徴収義務者用=事業主用)に個人番号(マイナンバー)記載欄が追加されました。すなわち、会社から個人番号の提出を求められても、イヤだと断っていた人の個人番号も、本人の知らないうちに記載されて、会社に送られているのです。ご存じでしたか?

 この問題は、昨年より向日市議会でも問題であるとして取り上げました。(1)個人番号の提出を拒否している従業員の個人番号が、本人の了解無く会社に知られる(2)誤配達などによって個人番号が漏洩(ろうえい)する(3)送られた個人番号が記載された書類を厳重に管理できる体制にない事業者が多く(中にはブラック企業も)、個人番号の漏洩・悪用の危険が計り知れない、などを指摘し、住民税額決定通知書に個人番号を記載しないよう強く求めました。税額決定通知書に個人番号を記載する必要性は特に無いのです。「個人番号を記載させたい」という国の意志しか感じられません。

 一方総務省は「個人番号を記載しないことは認められない」とする通知等をくり返し発し、国の指示に従うよう市町村に圧力をかけ続けました。そして多くの市町村は国の言う通りに記載しました。

 その結果、危惧していた通り5月中旬以降、誤配達による個人番号の漏洩が全国の市町村で続出していることが表面化しました。向日市でも、3件5人分の漏洩が公表されました。表沙汰になっていないものがどれだけあるかは全くわかりません。向日市では、1通160円の追加費用(総額117万円)をかけて「特定記録郵便」で送ったにもかかわらず、漏洩トラブルを起こし、都度謝罪しています。

 しかしこうした危険を認識し、総務省の通知に従わず、個人番号の記載を取りやめたり、一部しか記載しない対応を行った市町村が多数あったのです。東京都や埼玉県、山口県では大多数の市町村が、大阪府では過半数の市町村が、不記載(または部分記載)の対応をしたようです。

 住民税は市町村の仕事ですから、国の通知は「技術的助言」にすぎず、その助言を聞いた上で市町村が主体的に判断する権限があります。個人番号を記載した書類を何千万通も郵送したら、大量の漏洩が起こることは誰が考えてもすぐわかります。国は個人番号の記載を強要し、簡易書留などの費用は保障せず、あげくに「漏洩事故を起こした市町村は猛省せよ」(高市総務相)という姿勢です。猛省すべきは、高市総務相あなたです!
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