2017年07月28日 1487号

【稲田防衛相が爆弾発言/「辺野古移設でも普天間返さず」/建設阻止への起爆剤に】

稲田発言で大騒動

 本土では報道されていないが、稲田朋美防衛相がまた爆弾発言し、沖縄では県議会で大騒動。7月9日の那覇市議選でも大きな争点となった。

 6月15日参院外交防衛委員会で、稲田は「辺野古新基地建設が進んだとしても、それ以外の返還条件が満たされない場合は、普天間基地は返還されない」と答弁した。辺野古は「普天間の移設基地」ではなかったのか。辺野古ができても普天間を返さないとはどういうことか。

 6月28日からの沖縄県議会で翁長雄志(おながたけし)沖縄県知事は、稲田発言について「大きな衝撃をもって受け止めている」と答えた。当然だ。政府がこれまで繰り返し「世界一危険な普天間基地を辺野古に移設することで、宜野湾市民の安心安全の確保、基地負担の大幅な削減につながる」と大見得を切ってきたのが、辺野古ができても返さない場合があると言い始めたからだ。

 返還条件とは何か。防衛省も従来8項目の条件が満たされない場合は返還されないとの見解を示していたが、防衛相が明言したのは初めてだ。

 6月の参院委員会で問題となったのは、条件のひとつ「長い滑走路を用いた活動のための緊急時における民間施設の使用の改善」だ。辺野古新基地が建設されても大型航空機などは民間施設で使用することになり、負担軽減にならない。それが現在第2滑走路建設中の那覇空港を指しているのか。7月5日の県議会で、謝花喜一郎知事公室長は「那覇空港ではないかと推測している」と述べ、その上で「那覇空港の米軍による使用は絶対認められない」と明言した。

 こうした県議会のやりとりが議会初日から続き、与党会派議員から普天間返還条件に関係する質問が出ると、自民県議のやじや暴言が激しくなり、稲田発言を引用した質問について議事録から削除するよう自民県議が猛反発する場面まであった。ついには与党会派が「議場の秩序維持を求める」決議案を提出、採択されるほどの大混乱となった。

 内閣支持率が急落する中、那覇市議選への悪影響を恐れて自民県議らが議会で大暴走。辺野古ができても普天間は返さないと防衛相が明言したことで、今後に与える影響は大きい。新基地建設阻止の闘いの新たな起爆剤となる。

「諦め」誘う猿芝居

 4月25日から始まった沖縄防衛局の辺野古沿岸域「K9護岸」の砕石投下工事。現在、沖合に100メートル程度が防波堤のようにせり出している。その工事が7月4日から止まっている。土木工事に詳しい沖縄平和市民連絡会の北上田毅さんは、K9護岸に消波ブロック(テトラポッド)が設置されたことについて「沖縄防衛局は台風の高波による護岸への影響を防止する一時的措置と回答した。台風シーズンが終わる11月末まで、しばらく工事が休止される可能性は高い」と指摘する。

 4月開始の工事自体、埋立承認願書の「設計の概要」と全く異なる工事をしていた。現在の護岸は、砕石とネットに入った捨石が投下されているが、設計概要では、基礎捨石の上に被覆(ひふく)ブロックを両側から重ねていかなければならない。被覆ブロックとは、1立方メートル程度のコンクリートの固まりで、凹凸があるレゴブロックのようなもの。この被覆ブロックを設置しないまま、砕石投下されていた。被覆ブロックの上にさらに砕石を敷きならしてコンクリートの上部工(上部構造)を造り、最後に海側に消波ブロックを設置するという工程が正しい。沖縄防衛局の説明によると、台風シーズンが終わる12月以降にいったん設置したネット砕石と消波ブロックを撤去し、最初に戻って基礎砕石の上に被覆ブロックを置き直すことになる。工事はまた逆戻りするわけだ。

 なぜこのような杜撰(ずさん)な工事になったのか。K9護岸は、当初から工事用仮設道路が必要でそれが完成しない限り、大量の資材搬送はできない。ところが、設計概要の変更には県の許可が必要だ。準備が整っていないにもかかわらず、砕石投下を始めたのは、護岸工事が開始された≠ニして県民を諦めさせるためのものだった。高江ヘリパッドと同じように、またも虚構の政治的パフォーマンスのために仕組んだ芝居だったのだ。

宮古島でも同じ

 南西諸島の自衛隊配備でも同様だ。宮古島市民会議・事務局長代理の当真まり子さんは「6月千代田カントリー用地取得、8月工事開始と防衛省はリーク情報を流したが、まだ土地も取得していないし、別の物件を検討している情報もある。ともかく島民には工事が進んでいると思わせ、反対しても遅いという雰囲気を植え付けるものだ。だまされはしない」と指摘した。

 安倍政権、沖縄防衛局は、根強い反対の動きを封じるために「諦めさせる手法」をどこでも使う。だが、もう多くのやり口では化けの皮が剥がれている。「宮古の自衛隊を止める力も安倍打倒」と当真さんはきっぱり語った。

     (7月12日、N)

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS