2017年07月28日 1487号
【読売新聞は「裸の王様」か/読者のクレームもどこ吹く風/報道の役割を捨てた安倍広報紙】
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支持率低下に歯止めがかからない安倍内閣。もはや「安倍一強」などとは言えないが、御用メディアとして政権を支えてきた読売新聞にも危機が忍び寄っている。露骨な安倍擁護の報道姿勢に対し、読者の批判が殺到しているのである。だが、ナベツネこと渡邉恒雄・グループ本社主筆をはじめとする首脳陣には何の反省もないようだ。
政治的謀略に加担
「私としては、個人的な行動がどうして全国紙で報道されるのか、官邸と読売新聞の記事は連動している、と主観的に感じ取った。もし、私以外にも行われているとしたら、この国の国家権力とメディアの関係は非常に問題がある」
7月11日、加計(かけ)学園問題をめぐる閉会中審査に参考人として出席した前川喜平・前文部科学事務次官は、そう言って自身に対する「読売」の報道を批判した。内部告発つぶしを狙った官邸のリークに乗っかった謀略記事ではないか、と言うのである。
たしかに、5月22日の朝刊に突如掲載された「前川前次官 出会い系バー通い」との記事は異様だった。記事の内容は、前川前次官が在職中に「売春の温床」と指摘される歌舞伎町の風俗店に入り浸っていたというもの。ただし、本人への取材はしておらず、違法行為を確認するような具体的な事実は書かれていない。それこそ印象操作の見本のような記事である。
「出会い系バー通い」の情報は安倍官邸が公安を使って入手していたものだ。「総理のご意向文書は本物です」という証言が世に出る前に、内部告発者を人格的におとしめ、政権への打撃を最小限に抑えようとしたことは明らかだ。そうした政府の謀略工作に「読売」はプレーヤーとして加担したのである。
「知る権利」を無視
安倍政権との共犯関係をおおっぴらにした今回の報道に対しては、当然ながら批判が殺到した。すると「読売」は、社会部長名の反論文を載せ(6/3朝刊)、自己弁護を試みた。いわく「文科省の最高幹部」が「違法の疑いが持たれるような店」に出入りすることは不適切な行為であり、その報道は「公共の関心事であり、公益目的にもかなう」。
結論はこうである。「私たちは、これからも政権・行政の監視という報道機関の役割を果たしていく」。開いた口がふさがらない。読売新聞がいつ「政権・行政の監視」に取り組んできたというのか。安倍政権に都合の悪い事実は極力報道せず、「なかったこと」にしようとしてきたではないか。
最近の事例では、下村博文(はくぶん)元文科相をめぐる「加計学園からのヤミ献金」疑惑がある。東京都議選の最終盤に発覚したこの問題を新聞やテレビは大きく報じた。だが、読売新聞は見事に黙殺した。6月30日の朝刊をみると、1面はもちろん政治面にも「下村」の見出しが出てこないのだ。
自民党都連会長として都議選を仕切っていた下村は「公人中の公人」である。安倍首相の最側近として知られ、加計学園を管轄する「教育行政のトップ」でもあった。その不正疑惑を華麗にスルーする「読売」に報道機関を自称する資格はない。政府の意向にひたすら追随する、御用新聞以外の何ものでもない。
こんなこともあった。官邸での定例会見で東京新聞の望月衣塑子(いそこ)記者(社会部)が菅義偉(すがよしひで)官房長官を厳しく追及すると、「読売」の官邸担当キャップが激怒。「東京」の官邸担当に詰め寄り、「何だあいつは。あんなヤツを二度と会見場に入れるな! これはクラブの総意だからな」と怒鳴りあげたというのである(6/29日刊ゲンダイ)。
お前は政府の番犬か。「一体だれのために働いているのか」と言いたい。
提灯記事に社長賞
「読売」の報道姿勢を読者はどう感じているのだろう。実は、数多くの批判が読者センターに届いている(週刊文春6月29日号)。「読売は越えてはならない一線を越えてしまった」「官邸からのリークを垂れ流すだけの安倍晋三氏の個人広報紙か」「信用できないのでやめる」等々。
だが、政権との癒着で感覚が麻痺した「読売」上層部には世論の変化が見えないようだ。安倍首相の「読売新聞を熟読してほしい」発言で物議を醸した憲法「改正」に関するインタビュー記事(5月3日朝刊)を社内表彰したというからあきれてしまう。
さすがに「あんな安倍政権の提灯記事が獲るなんて、仰天しました」といった不満が社内から出ているという(週刊新潮7月6日号)。そりゃそうだ。首相の言い分をタレ流しただけの「批判精神の欠片もない」(読売記者)記事が社長賞(副賞100万円)だなんて馬鹿げている。
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よほど気が合うのか、「読売」の渡邉恒雄主筆と安倍首相は最近月1のペースで会食を重ねている。実際、両者は似た者どうしだ。独裁体質、批判や異論を許さぬ態度、そして民意の無視である。読者の「知る権利」よりも政府の都合を優先した中身スカスカ新聞に未来はない。 (M)
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