2017年08月18・25日 1490号

【「私の残業、勝手に売るな!」 怒りで連合・安倍談合は破綻】

 残業代ゼロ導入を狙った安倍政権―連合の談合に、労働者・市民の怒りと抗議が立ちはだかった。連合会長らは残業代ゼロ法案容認姿勢を撤回せざるを得ず、「人づくり革命」の看板材料にしようとした安倍の思惑は失敗した。ここでも安倍の終わりが始まりつつある。

 7月13日、連合・神津会長は、安倍首相に対し、国会で継続審議中の残業代ゼロ法案(高度プロフェッショナル制創設と企画型裁量労働制の拡大)について、「年間104日以上かつ4週を通じ4日以上の休日確保の義務化」「企画型裁量制の対象者を明確化すること」などと修正提案。

 安倍は渡りに舟と、「本日の提案は中身についての提案であり、建設的なもの。ご提案に沿うかたちで、私と神津会長と榊原会長(経団連)との間で、政労使合意が成立するよう最大限、尽力したい」と対応した。

 神津会長は同日、「高プロ制の導入と企画裁量制の拡大は必要ないと一貫して言ってきた。最悪の事態を避けるため、事務レベルでいろいろな問いかけや働きかけを行い、何とか形になりそうになった」と言い訳した。

連合幹部暴走に抗議噴出

 「三役会や中央執行委員会で議論する必要はない」と政労使合意を進めようとした連合の逢見事務局長に対し、全国コミュニティーユニオン連合会(全国ユニオン)が抗議文を公表。それを契機に、異論や抗議が噴出した。

 7月19日には、労働者・市民が連合本部前に集まり、「私の残業、勝手に売るな!」「労働組合の看板を下ろせ!」と抗議する前代未聞の事態に発展した。

 21日の中央執行委員会では、会長や事務局長の機関手続き無視に対する批判が相次ぐ。全国ユニオンをはじめとした産別組織や連合北海道などの地方組織からも反対の声が上がった。「高プロに反対といいながら、修正提案で政労使合意するなら、修正付き容認ではないか」「安倍政権が支持を失い、退陣も視野に入り、高プロを出せなくなるところへ追い込もうという時に、敵に塩を送るのか」

 当初設定されていた27日の政労使合意のもくろみは破綻。連合は27日臨時の中央執行委員会で、政労使による修正合意の見送りと残業代ゼロ法案への容認姿勢撤回を決めた。

 この政労使合意策動の失敗は、官邸による連合取り込み戦術にブレーキがかかったことを意味する。

 神津会長が洩らしているように3月から自民党厚労族議員が連合本部に働きかけ残業代ゼロ法案の修正合意を煮詰めてきた。しかし、連合本部の独走に、連合加盟組織、全労連、全労協、過労死家族の会、労働弁護団など全国から労働者・市民の批判の声が沸き起こり、これをストップさせた。同時に、一連のマスコミ報道が残業代ゼロ法案の問題を改めて鮮明にすることにもつながった。

 この力を秋の臨時国会に向けてさらに大きくしていくことが問われている。

残業代ゼロ法案は粉砕だ

 そんな中、日本経済新聞は連合の方針変更に逆ギレ。28日(電子版)には「誰のための連合か 『脱時間給』容認撤回」を掲載し批判した。

 同記事は「連合は本当に働く人のための組織なのか」と切り出し、「労働時間ではなく成果に対して賃金を払う脱時間給は、働いた時間では成果が測れないホワイトカラーが増えてきた社会の変化に即したものだ」と続ける。

 日経新聞は、残業代ゼロを「脱時間給」と表現する。問題は「脱時間給」という用語ではなく、「労働時間ではなく成果に対して賃金を払う」としているところだ。残業代ゼロ法案は、賃金制度を決める法案ではない。法案には賃金制度をどうこうせよという内容は一切含まれていない。

 さらに同記事は「経済のソフト化・サービス化が進んだ現在は、労働時間で賃金を決められるよりも成果本位で評価してもらいたいと考える人も増えていよう。効率的に働けば労働時間を短くできるメリットも脱時間給にはある」と続ける。法案に書かれてもいない成果給賃金制度を前提に、残業代ゼロ法案が労働者のためになると強調する。

 残業代を支払わないということしか法案には書いていない。労働者のためには一切ならない。

 このことを全国の労働者に広げ、安倍政権ともども法案を粉砕しよう。

 
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