2017年08月18・25日 1490号

【ミリタリー 朝鮮のミサイル―緊張望む日米 無条件日朝国交樹立こそ打開の道】

 朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が7月28日、2回目の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」の発射実験を強行した。

 「弾頭部分が大気圏内に再突入した際、崩壊した可能性が高い」との米国発の分析もあるが、朝鮮のミサイル・核開発は一向に止む気配はない。なぜか。米国も日本も本気で止める気がないからだ。それどころか、こうした軍事を含む緊張関係の持続を本当は望んでいるからである。

 「北の核プログラムに制限をするためには、交渉を再開するしかない」(ジョンズ・ホプキンス大学研究論文)との現実的対応論が米国内にもある。朝鮮のミサイル開発を事実上放置している一つの理由は、たとえ朝鮮のICBM技術が完成したところで、米国の核戦力との「力の均衡」などあり得ないことを見越しているからだ。

「使うことのない核」開発

 「大陸間弾道弾が完成したら、つぎは原子力潜水艦をつくって、潜水艦発射核ミサイルを搭載させなければならない。北朝鮮はソ連ではない。そのような軍備競争を進めることはできないはずだ」(『世界』7月号、和田春樹)というのは国際的には常識である。

 朝鮮の側も、「われわれは生存権のために核を持つようになった」「生存権が保障されるのであれば、核は無用の長物である」(04年、金正日<キムジョンイル>)と実際に「使うことのない核」開発を前提にしている。また、朝鮮のミサイル・核開発の動機は、ソ連崩壊で深刻な経済的打撃を受け、通常兵器のレベルを維持することが難しくなり、核兵器に執着する傾向を強めたといわれている。「ミサイル・核開発によって、軍事費の節減、合理化を達成できた」との主張も公式に展開されているのだ。

 こうして朝鮮のミサイル・核開発の経緯と「実利的な目的」を冷静に見れば、いたずらに危機を煽り、緊張を高めることだけに専念する安倍政権の対応がどれほど危機回避とかけ離れたものであるかがわかる。

対話政策模索する文政権

 安倍政権の緊張激化政策と対照的なのがろうそく革命≠ナ誕生した韓国の文在寅(ムンジェイン)新政権の対話政策である。新政権は大統領選挙戦中に発表された「朝鮮半島の非核平和構想」((1)中国の役割ではなく韓国の役割が重要である。中国を説得して6か国協議を再開させ、米国を説得して米朝関係の改善を誘導し、北を説得して対話のテーブルに着かせる(2)北の核放棄を先行条件とするのではなく、関連国すべてが同時行動の原則に依拠し、非核化と平和協定締結を包括的に推進すべき等)を基に対話政策を模索し始めている。

 韓国政府は7月17日、軍事境界線付近での緊張緩和のための軍事当局者会談を21日に板門店で実施することを朝鮮側に提案。また南北離散家族再会事業のための赤十字会談を8月1日に開催することも呼びかけた。続けて、文在寅大統領が、平昌(ピョンチャン)冬季五輪(来年2月)での韓国と朝鮮による合同チーム結成を提案し、開会式での合同入場行進も実現させたいと表明した。今のところ、朝鮮側から公式の反応はないが、水面下での動きを含め精力的な動きが続けられていることは想像に難(かた)くない。

 日本政府は、平和の展望を持たない米国とではなく、韓国新政権の緊張緩和に向けた具体的動きに連動した行動を追求すべきである。

 オバマ大統領が、「無条件キューバ国交樹立」を行ったように、「無条件日朝国交樹立」が今日の朝鮮半島情勢を大きく変えることは間違いない。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会

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