2017年08月18・25日 1490号

【沖縄辺野古新基地建設阻止 K9護岸工事のもう一つの狙い でたらめ宣伝暴く闘いを】

暴力の象徴「赤い髑髏」

 名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ内の西側、辺野古漁港に面し水陸両用車が坂道を上がるスロープの壁面に縦4b、横10bの巨大な「赤い髑髏(どくろ)」の絵が描かれている。すぐ近くには、埋め立て工事を早めるためテトラポッド等を製造する生コンクリートプラントが建設された。頭蓋骨には、刃と船を漕ぐオールが突き刺さり、左に潜水夫、右には鳥の羽が描かれている。

 このレッドスカルの意味はわからないが、歴史的には海賊による拷問と残虐な死を表すという。海兵隊基地がむき出しにする暴力の紋章に対して、豊穣(ほうじょう)の海に浮かぶ新基地建設阻止海上行動の抗議船やのぼりには、平和を願ってウミガメやジュゴンの絵が描かれる。豊かな海を海外への侵略戦争による赤い血で汚させてはならない。

7月末連続の行動

 辺野古と高江は7月末、3日に一度の大きな行動や集会が続いた。

 7月22日、キャンプ・シュワブのゲート前で「人間の鎖大行動」(基地の県内移設に反対する県民会議主催)が開かれ約2千人が集まった。

 25日には、カヌー71艇、抗議船8隻で「海上座り込み大行動」が行われた。4月25日、日本政府が大々的に「K9護岸」の埋め立て着工をマスメディアで宣伝した時からちょうど3か月。節目のこの日、海上行動に参加する市民が総結集し、「違法な工事はやめろ」「海を壊すな」とシュプレヒコールを上げた。前日の24日に翁長雄志(おながたけし)知事が岩礁破砕工事の差し止め訴訟を起こし、知事を後押しする現場の連帯の声も上がった。71艇のカヌーは、辺野古の海を覆いつくし、立ち入り禁止海域を示すフロート浮具沿いに並んだ様子は力強く、圧巻だ。

 28日には、東村と国頭村(くにがみそん)に広がる米軍北部訓練場のヘリパッド運用停止を求め、「住民無視・高江ヘリパッド運用抗議集会」(オスプレイ・ヘリパッド建設阻止高江実行委員会主催)が開催され、約120人の市民がメインゲート前に座り込んだ。7月11日から垂直離着陸機オスプレイの運用が始まり、午後10時以降も旋回、着陸、離陸を繰り返し、爆音で眠れない日々が続く。今年4月、隣接する国頭村へ高江から家族6人で移住した安次嶺現達(あしみねげんたつ)さんは「住民は墜落の危険と常に隣り合わせだ。生活を無視しており本当に許せない」と憤った。

 灼熱の太陽が突き刺さる沖縄島北部の小さな高江と辺野古の集落に襲いかかる国家権力。一人ひとりは力はなくとも、市民が連日のように厳しい暑さの中集まり、軍事要塞化を許さない闘いが粘り強く取り組まれている。

選挙の争点はずし

 辺野古の「K9護岸」工事は、「仮設工事」だったことが明らかになった。沖縄防衛局の「シュワブ(H26)傾斜提護岸新設工事 仮設工事詳細施工計画書」(2017年4月)によると、当初から100bだけの施工とされていた、と沖縄平和市民連絡会の北上田毅さんは語る。現在、設置している根固め袋材やテトラポッド、防潮堤としての築提マット(蛇籠<じゃかご><円筒形に編んだかごに石をつめたもの>)などはすべて撤去しやり直す。

 では、4月25日の大々的な護岸工事着工とは何だったのか。県民を諦めさせるためと私自身も何度も書いてきたが、7月9日那覇市議会議員選挙結果で安倍政権のもう一つの狙いが明らかになった。

 那覇市議選で政府は、翁長知事の「オール沖縄」を壊すことを狙っていた。翁長那覇市長時代から親しい辺野古新基地反対の元自民党市議らでつくる「新風会」の議員が何人も落選した。一方、自民党市議も14人が立候補し7人が落選したのだから自民の勝利とも言えない。最も議席を増やしたのは、辺野古新基地建設について賛成でも反対でもないとする中立派だ。当選した中立派候補者の多くが、辺野古についてのアンケートで「もう埋め立て工事が始まっているので、選挙の争点にならない」と回答している。安倍政権が狙っていたのは、これだった。4月25日の護岸工事着工キャンペーンによって、今さら反対と言っても仕方ない、どう環境保全するのかの条件交渉に世論が変わることを狙っていたのだ。

 この作戦で、来年1月の名護市長選挙、9月名護市議選、そして11月知事選で辺野古は選挙争点にならない≠ニして、翁長知事を追い詰め「オール沖縄会議」を完全に崩壊させることを狙う。

 計画書本体にもないカムフラージュの「護岸工事」を大々的に宣伝し、県民の意識を操作する安倍政権。デタラメな工事着工にだまされず、埋め立て工事はまだ始まっていないことを伝え広げることが求められる。まず1月の名護市長選が絶対勝利しなければならない剣が峰だ。 (N)



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