2017年08月18・25日 1490号

【原発輸出反対 国際連帯シンポジウム/日印協定承認後の方針を討議/インドへの輸出阻止は可能だ】

 7月30日、「第4回原発輸出反対国際連帯シンポジウム」が、インドからフォトジャーナリストで反核運動全国連合(NAAM)のメンバーでもあるアミルタラジ・スティブン氏を迎えて行われた。日印原子力協定(以下「協定」)発効後の運動方針を中心に活発な討議となった。

 シンポジウムは、コアネット(戦略ODAと原発輸出に反対する市民アクション)事務局次長村地秀行氏の基調報告の後、パネリストのii正明氏(岐阜女子大・南アジア研究センター)、大久保徹夫氏(原発メーカー訴訟原告団代表世話人)からの報告と提起で進められた。

 基調報告では、「日印原子力協定国会承認反対キャンペーン」(23団体・個人参加)と超党派国会議員「原発ゼロの会」を中心に取り組まれた反対運動の成果を確認し、「7月20日に日印原子力協定が発効したが、単に『枠組み』をつくったにすぎず、インドへの原発輸出阻止は可能だ」と強調。「キャンペーン」をさらに発展・拡大し、継続的に活動することが提起された。

抜け穴だらけの協定

 ii氏は、「協定」交渉の経緯をおさらいしつつ、国会承認された「協定」の持つ問題点を次のように整理した。

 (1)インドが再度の核実験を行なえば協力停止との条件は、「停止条項が定める要件にあえば通告の日から1年で協定を終了する」となった。核実験即時協力停止≠ナはない。

 (2)インドを特別扱いして、再処理・濃縮を事前包括同意(他国との協定では個別協議)。核兵器製造に用いられるウランの高濃縮(20%)を将来認めることができる条項も滑り込ませた。

 (3)軍事転用を防ぐためのIAEA(国際原子力機関)の保障措置は、インドが「民生用」と定めた施設のみで「軍事用」が対象にならないことは変わっていない。

 そして、今後の行動方針として、(1)メーカーが輸出できないよう圧力を加える(2)原発輸出への公的資金支援に関して「安全確認制度」等を追求する(3)インド以外の国への輸出にも反対(4)インドに原発をつくらせない(日本以外の国からの輸入、国産原発にも反対)(5)フクシマ原発事故の実相をインドの人々に正確に伝える(6)「国会議員訪印団」を実現する、と提起した。

 大久保氏からは、「原発メーカー訴訟原告団」が裁判で主張する「ノー・ニュークス権」(原子力の恐怖から免れて生きる権利)が憲法前文、第13条、第25条を根拠とし、日本の原子力賠償法が持つ責任集中制度を中心とする不備を改めさせるものであることが強調された。

現地住民の闘い

 スティブン氏は、自ら撮影したクダンクラム原発に反対する住民の闘いの写真(2012年9月)をバックに当時の状況を語った。水道などのライフラインを警察に止められ、やむにやまれず、原発に向かって海の中を行進した「海の行進」に対して、海上警察が飛行艇で恫喝する様子を海に浸かりながら撮影したことなどが語られた。また、こうした写真を大学構内や路上など様々な場所で展示し、学生や市民に語ってきた自身の活動も報告。

 彼が強調したのは、「インドでは、政府による『フクシマ事故は大きな事故ではなく、放射能被害も起こっていない』との誤った情報が流布されている」ことだ。二度目の来日だが、希望は「昨年訪ねた福島を再訪問するとともに『子どもの甲状腺ガンの発生』について詳しく知りたい」。この希望は、医療問題研究会の医師との会談で実現し、情報交換を約束した。

 2017ZENKO in東京にはNAAMから連帯の声明が届いた。シンポジウムではこれを紹介し、ZENKO第5分科会決議案について(1)インドとの共同行動を「原発メーカー抗議」だけでなく両国市民の情報交換等全般的に展開する(2)日本製だけでなくインド国産も含め、あらゆる原発に反対していく―と補強修正して、終了した。

(コアネット 三ツ林安治)

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