2017年09月01日 1491号

【みるよむ(450) 2017年8月12日配信 イラク平和テレビ局in Japan イラクの教員の命と生活を守れ】

 イラクの教育現場は、汚職と官僚主義、政府の予算削減によって厳しい状態が続いている。教員に対する暴力事件まで多発している。2017年5月、サナテレビはバグダッド市のカルク第2地区の教員や教育局を取材した。

 サナテレビは、カルク教育局人材育成部長に教育現場の実情を聞いた。「教員志望者の願書が届いても、人事部や各地域の教育部に送ったら10日間も遅れる。それを管理局に送るとまたもや10日間遅れる」と答える。書類を運ぶ人手がないことが原因のようだ。書類1つのやりとりで20日間も遅れるというのだ。

 同教育局会計局補佐の女性は「行政当局が現場に配置する職員が少ないために事務手続きの仕事が遅れてしまい、賃金の遅配が起こっている」と訴える。

 イラクの教育行政では日常的な遅延が起きている。なぜこんな事態になのか。アバディ政権が進める緊縮政策によって、政府省庁の予算は実に50%も削減されている。そのために極端な職員不足となっているのだ。

 教員のドニアさんの話は衝撃的である。彼女は転勤を申請して当局はそれを認めた。ところが「担当教科が違う」と、転勤先の校長に拒否されてしまう。教育監督官が調査し、やっと転勤できた。当局と学校現場の管理職との間で、転勤する教員の担当教科などの基礎的な情報のやりとりさえできていない。

 彼女の身の上にさらに深刻な事件が降りかかった。「転勤したばかりの私のところに2人の女性が突然やって来て、私を殴って逃げていったのです」。ドニアさんはサナテレビを通じて傷害事件を調査しろと教育行政当局に要求している。サナテレビのインタビューに、同地区教育局長はこの事態を憂慮し、弁護士も使って加害者を裁判に訴えると約束した。

 今、イラク各地の学校現場で教員に対して暴力をふるう攻撃が続いている。

 3月20日、中部ディヤラ州の教員組合は、ナイフで刺される事件をはじめ10件以上も起きている教員への暴力事件に対して抗議デモを展開した。

 サナテレビは、教員らの置かれている現状とその訴えを伝え、不当な攻撃を許さず、ともに声を上げようと呼びかけている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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