2017年09月01日 1491号

【オスプレイと地位協定/本当は飛んではいけない欠陥機/軍事ファースト支持する安倍政権】

 「日米地位協定はもう少し見直さないと」。米軍輸送機オスプレイの墜落事故を受けた江崎鉄磨(てつま)沖縄・北方担当相の発言である。江崎はその日のうちに発言を修正し、メディアは「素人大臣の失言」を批判的に報じた。だが、発言内容は何もおかしくない。おかしいのは、危険な欠陥機の飛行を治外法権的に許している地位協定の方なのだ。

「門外漢」の正論

 8月5日、米軍普天間飛行場所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイがオーストラリア東海岸で墜落、乗員3人が死亡した。最も深刻度が高い「クラスA」にあたる事故である。日本政府は6日、オスプレイの飛行自粛を米側に要請したが、米軍は翌7日に沖縄で飛行させた。

 「安全性を確認した」と米軍は言うが、とても信用できない。普天間所属のオスプレイは昨年12月にも沖縄県名護市沖で墜落事故を起こしている。この事故の調査報告書すら米軍はいまだ日本側に提供していないのである(提出期限は6月だった)。

 米軍の本音は「運用上必要と判断した」(シュローティ在日米軍副司令官)の一点に尽きる。米国防総省のデービス報道部長は7日、「現時点でオスプレイの飛行が制限されている区域はない」と言い切った。“どこでどのように飛ばそうが我々の勝手。日米安保体制とはそういうもの”と言いたいのだろう。

 このような流れの中で、江崎沖縄・北方相は日米地位協定について「もう少し見直さないといけない。門外漢だが私はそういう気持ちを持っている」と語った(8/8閣議後の会見)。メディアは「異例の言及」と報じたが、地位協定がオスプレイの脅威をもたらしている以上、見直しは当然かつ最低限の要求である。日本政府が聖域扱いしていることこそ変なのだ。

 もっとも、確固たる信念があるわけではない江崎は、数時間後には発言を修正。以降は事務方が用意した文書の棒読みに終始している。良心を捨てて思考停止できる者でなければ、安倍政権の閣僚は務まらないということだ。

危険な特権を付与

 日米地位協定とは、在日米軍に施設や用地を提供する方法や、駐留米軍や軍人・軍属の法的地位を定めた協定のこと。調印・発効は現日米安保条約と同じ1960年。以来、一度も改定されていない。

 地位協定の本質は「米国が占領期と同じように日本に軍隊を配備し続けるための取り決め」(前泊博盛・沖縄国際大学大学院教授)である。地位協定にもとづく数々の特措法によって、在日米軍および米兵らには日本の法律に拘束されることなく行動できる特権が与えられている。

 オスプレイ関連で言うと、飛行の安全に関する法規定の適用除外がそうだ。日本の航空法は、オートローテーション(エンジンが停止しても、機体の降下で生じる空気の力で回転翼を回して揚力を生み出し、緊急着陸する方法)能力がない回転翼機の飛行を禁じている。オスプレイには機体の構造上、この能力がない。本当は飛んではいけないシロモノなのである。

 また、航空機の最低安全高度規定(人口密集地で300メートル、それ以外は150メートル)も米軍機には適用されない。事実、オスプレイは全国21県にまたがる6つのルートで、高度60メートルほどの超低空飛行訓練を行っている。安全性より軍事を優先する地位協定が危険な飛行を許しているのである。

戦時体制の既成事実化

 オスプレイ24機が配備されている普天間飛行場は宜野湾市の中心部に位置する。機体トラブルが墜落に直結する欠陥機が住宅地の真上を飛んでいるのだ。沖縄だけではない。オスプレイは横田基地(東京都)や厚木基地(神奈川県)に頻繁に飛来している。過去に海兵隊ヘリが墜落した愛媛県の伊方原発周辺でも目撃情報がある。沖縄と岩国基地(山口県)を結ぶルートにあたるからだろう。

 このような事態を日本政府は容認している。今回の飛行自粛要請にしても、実は「運用上必要なものを除いての申し入れ」(菅義偉(すがよしひで)官房長官)にすぎなかった。これでは「自由に飛ばしていただいて構いません」と言っているのと同じである。

 そして8月11日、防衛省は日本国内での飛行再開を正式に容認した。14日、小野寺五典(いつのり)防衛相は沖縄県を訪問し翁長雄志(おながたけし)知事と会談。オスプレイについて「わが国の安全保障の中で大変重要な装備であり、活用したい」と述べ、飛行に理解を求めた。これはまさに安倍政権の「軍事ファースト」宣言である。人命軽視もはなはだしい。

 「米国に物言えない安倍政権は弱腰だ」とよく言われる。だが、連中は渋々「米国の言いなり」になっているのではない。地位協定・特措法が日本国憲法を超越する事態は彼らも望むところだ。平和憲法の破壊を促進するために、戦時体制を既成事実化しようとしているのである。

 危険なオスプレイは日本にいらない。安倍政権ともども、即刻消えてくれ。  (M)



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