2017年09月08日 1492号

【ZENKO 交流のひろば 国鉄分割民営化30年を問う 安全軽視とローカル線切り捨て JR再公有化、組織罰を】

 国鉄分割民営化から30年。国は、相変わらず国鉄改革は成功との姿勢を変えようとしない。だが、改革の失敗は一部閣僚や自民党議員も認めざるを得ないほど明らかになっている。

 2017ZENKOin東京「交流のひろば〜国鉄分割民営化30年を問う」では、JRの問題点を明らかにするとともに、再公有化をめざす論議が行われた。

事故は民営化の象徴

 初めに、民営化以降、JR西日本で起きた2つの大事故である信楽高原鉄道事故(注1)、福知山線脱線事故(尼崎事故、注2)に関する報告が行われた。信楽高原鉄道事故では、事故の真相究明に取り組もうとしない国に対し、被害者や市民の粘り強い取り組みによって鉄道安全推進会議(TASK)の活動が始まったことが報告された。TASKの活動は、鉄道事故に関する常設の調査委員会がなかった日本の現状を改め、国に航空・鉄道事故調査委員会(現・運輸安全委員会)を常設させる原動力となった。

 尼崎事故に関する報告では、事故の原因として利潤の最大化と安全軽視、闘う労働組合の解体、技術継承の失敗と強権的労務管理を指摘。交通弱者を出さず、安全を第一に考える公共交通の復活のため、将来は国有鉄道を取り戻すことが必要であるとしてJR再公有化が提起された。

新自由主義の自滅

 JRが全営業キロの半分に当たる13線区を「単独では維持困難」と公表、路線廃止を打ち出した北海道。報告では、(1)JR北海道が人件費削減によって労働者に不利益を押しつけながら鉄道運輸収入を分割民営化当時と同水準に維持してきたこと(2)経営安定基金の運用益の減少が経常損益に影響を与えていること(3)JR北海道が航空機や高速道路との競争のため高速化に集中投資し、安全対策に資金を使わなかったこと(4)本州3社のうち最も経営基盤が弱いJR西日本の利益だけで、JR北海道、四国、九州、貨物4社の赤字をすべてまかなえるほど激しい会社間格差が生まれていること―を具体的なデータで論証。利益が中央に集中し、地方に不利益が押しつけられている実態を原発や基地問題と同じ構造のいわば植民地政策≠セと指摘。格差是正の必要性を訴えた。

 民営化によって経営効率化だけをひたすら追求、安全もローカル線も労働者もすべて切り捨てて暴走する存在となったJR。自ら生み出した新自由主義によって自滅しようとしているJRの実態が、各報告からあぶり出された。

組織罰で企業犯罪追及

 公共交通機関の事故のような企業犯罪を追及するため「組織罰」制度の導入を求める署名の呼びかけも行われた。日本の刑法は、企業が小規模だった約100年前に作られてから骨格がほとんど変わっておらず、経営者個人にしか刑罰を科すことができない。多くの部署に権限と責任が分散している大企業ほど個人の責任を追及することは難しく、企業による責任逃れの温床になってきた。尼崎事故で娘さんを失った藤崎光子さんを中心に、遺族は企業組織に罰金刑を科することのできる組織罰制度を一貫して求めている。

 英国では、労働党政権の下で、2007年「法人故殺法」が成立。企業犯罪で人が死亡した場合、裁判所が犯罪企業に「上限のない罰金」を課すと同時に企業名を公表する。巨額の賠償と企業名公表が大きな抑止力になり、法制定後、公共交通機関の事故が3割も減少。制定に激しく抵抗した経済界も今では法律に理解を示す。社会のルールに従うことは企業にも利益になることが示されている。

 「企業が世界一活動しやすい国」を目指す安倍政権の下で、日本では立憲主義が破壊され、政府・企業による公然たる法律無視が日常化している。コービン英労働党首が堂々と鉄道再国有化を唱えて総選挙で躍進したように、日本でも新自由主義の時代の入口になった国鉄分割民営化を見直し、JR再公有化、安倍政権打倒、立憲主義回復を実現しなければならない。 

(注1)信楽高原鉄道事故 1991年5月、旧国鉄信楽線を転換した第三セクター・信楽高原鉄道の列車とJRから乗り入れてきた臨時列車が正面衝突、42人が死亡。

(注2)尼崎事故 2005年4月、JR福知山線で、制限速度を大幅に超過した快速列車がカーブで転覆脱線、マンションに突っ込み乗客ら107人が死亡。

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