2017年09月15日 1493号

【都構想ゾンビ≠焉@都構想もどき≠焉@いらない 税金ぶんどり狙う維新にノー】

 日本維新の会(維新)の松井大阪府知事と吉村大阪市長は、一昨年5月の住民投票で否決された「大阪都構想」(都構想)の復活へ、特別区設置法定協議会(法定協)で総合区と「都構想」の並行協議を始めた。8月29日に開催された法定協では、8区に合区する総合区素案が提示され、9月末には「都構想」素案が提示される。大企業優先の政策で市民生活をどん底に突き落とす「都構想」も、「都構想もどき」の総合区も許してはならない。

都構想もどきの総合区

 「都構想」は、大阪市を廃止し、4から6特別区に分割して実質的に大阪府の下部組織にするものだ。市民の税金と資産をぶんどり、「ワン大阪」の名で一人の独裁者による上意下達の府市の意思決定で、大規模開発に巨額の税金をつぎ込むための制度だ。



 総合区は、地方自治法により、政令指定都市の条例で現在の区に代えて設けることができる制度。独自の予算と人事権を有する特別職の総合区長が強い権限をもち、総合区に関する行政はおおむねすべて実施できる。府市調整会議で政策の一本化が可能なため、特別区が基礎自治体で区長公選制及び独自区議会をもつこと等を除けば、総合区は「都構想」の特別区と似ており、「都構想もどき」といえる。維新は統治機構改革を基本政策のいの一番≠ノ挙げており、明らかにこの総合区制度を住民自治強化ではなく、統治のための機構として使おうとしている。

 そのことは「都構想」及び総合区素案の根幹となる「大阪副首都ビジョン」(17年3月副首都推進本部)を見れば一目瞭然だ。曰(いわ)く「世界の都市間競争を戦いうる総合的な競争力をもった都市」として「日本を牽引する成長エンジンの役割」をもち、阪神高速道路淀川左岸線や鉄道延伸、港湾整備などの大規模公共事業や公共サービスの民営化を打ち出し、「世界で最もビジネスしやすい環境づくり」をめざす。その副首都としての発展を加速させる起爆剤として2025年大阪万博とカジノ・IR(統合型リゾート)施設が最重要に位置づけられている。その一方、「大阪が副首都として成長を実現し、その果実によって豊かな住民生活を実現」とされ、市民生活向上は大企業の儲けの「おこぼれ」にありつけばよいとするのみ。まさに、破綻したアベノミクスの二番煎じで、徹頭徹尾、大企業の利潤拡大ありきなのだ。

 この構想を推進する大都市制度として「都構想」と総合区を比較検討すると言うのだから、両案が住民自治を強化し市民生活を豊かに向上させる意図で制度設計されてないのは明白だ。

「予算・職員増」もうそ

 法定協で説明された総合区素案は、現在の24区を8区に合区し、保育所整備など11分野の業務を区に移管。区が使える予算も82億円から262億円に増加し、区役所職員は4800人から7000人に増員するとしている。「道路の穴や公園のちょっとした整備など身近な所で判断できる」と吉村市長は自賛する。だが、市全体の職員の増員はなく、そのまま業務を移管すればその部分の職員・予算が増加するのは当たり前だ。15年の法定協での「都構想による再編効果」では今後2660人の職員削減計画が予定され、特別区だけで1936人の削減が明記されていた。計画が実行されれば、吉村市長が自賛するささやかな住民サービスにも支障をきたす。初期コストに約65億円かけるメリットはなく税金の無駄遣いだ。

 吉村市長は、2018年秋に都構想住民投票を実施することを念頭に「住民投票で賛成なら特別区に移行し、否決なら総合区にという議決をする」とし、住民投票前に市議会で総合区基本方針の可決を求める方針だ。維新が両案を法定協で協議するのは、「都構想」特別区が再度失敗しても総合区を「都構想もどき」として活用し、「財界のための市民の税金ぶんどり」に道を開くためだ。

 維新の進める「副首都ビジョン」では、大企業には巨大開発で儲けを保障し、市民の生活は「都構想」とカジノ・万博でどん底に突き落とされることは明白だ。「都構想」も総合区もいらない。

 9月13日には大阪市議会が始まる。法定協と議会を監視し、反対世論を強めよう。
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS