2017年09月15日 1493号

【避難の協同センターが交流集会/原発事故は終わってない 避難者を真ん中につながろう】

 「避難の現状と今後の支援について考える交流集会」(主催、避難の協同センター)が9月2日、都内で開かれた。福島事故から6年半、区域外避難者への住宅無償提供打ち切りから5か月。避難の現状と当事者の課題に応える支援について論議された。

救済を求め続ける

 避難の協同センター代表世話人で郡山市から神奈川県に避難している松本徳子(のりこ)さんが「原発事故は終わっていない。様々な問題に支援者と一緒に立ち向かいたい」と開会あいさつ。同事務局長の瀬戸大作さんは「生活困難、困窮関連のSOSが増える傾向にあり原発被害者救済を求め続けることが重要」とセンター存続の意義を訴えた。

 全国各地から避難当事者が参加した。北海道の避難者、宍戸隆子さん(こだまプロジェクト)、岡山のはっとりいくよさん(一般社団法人ほっと岡山)、千葉は古宮(こみや)保子さん(松戸黄色いハンカチ)、山形から佐藤洋さん(チーム毎週末みんなで山形)と同じく武田徹さん(福島原発被災者フォーラム山形・福島)。

 講演は「居住福祉に向けた提言」と題して葛西(くずにし)リサさん(立教大学研究員)。「母子世帯の居住貧困の実態は、現場では十分把握されている。問題・課題を可視化することが重要」と提言した。

避難者の横のつながりを

 続いて、6人の避難者が壇上に並び討論した。

 宍戸さんは、北海道自主避難者自治組織「桜会」・「こだまプロジェクト」の豊かな経験から「人をつなぐコミュニティが大事。どうしてもこぼれてしまう人がいることも事実。避難者の横のつながりを残していきたい」。はっとりさんは「シェアハウスや保養、多様なニーズに柔軟に対応し、自己回復できる場を長く続けたい」。古宮さんは「松戸・東北プロジェクトを立ち上げ、サロンを始めた。避難住宅打ち切りで市役所訪問やアンケートを実施。ありさんマークの社員、店長と引っ越し費用を安くしてくれる関係も。柏への出前サロンを実施し毎月サロンニュースを届けている」と、長期化した避難生活の課題を提起した。

 佐藤さんは「山形は福島の隣りだが、吾妻(あづま)連峰が放射能を遮(さえぎ)ってくれ、週末保養の場になってきた。今、一番怖いのは孤独感だが、保養に参加すれば、一人ではないとのメッセージを伝えられる」。区域外避難者の武田さんは現在も借り上げ住宅に残る。「原発事故は国家犯罪。国・東電に責任がある。(太平洋)戦争も4年で終わった。原発事故はもう7年。健康問題は全国同じ土俵に立てる。健康手帳を出せと要求する。行政が住宅追い出しの訴訟を起こせば受けてたつ」と語った。

 松本さんは「住宅無償提供が打ち切られたが(誰にも相談できないような)、水面下にいる方たちを救いたい。(支援の終了で)原発事故被害者はもういなくなったとされたくない。助け合い、力を合わせる重要なセンターになる」と役割を強調する。

避難者は五重苦

 福島市から都内に避難した岡田めぐみさんは「当時中学生だった女の子が『誰も教えてくれなかった』と言っているように、原発事故の怖さも分からないで大きくなった。次の世代に何が起きたかを伝えることは大人の責任」、静岡に避難中の長谷川克己さんは「避難者は3回バッシングを受けている。原発事故そのもの、故郷を離れたことで親戚から、今なぜ声を上げないのかと良識ある市民から。支援者はさまざまな運動をゆるやかにまとめる接着剤になってほしい」。田村市から都内に避難した熊本美弥子さんは未契約で都営住宅に継続入居中だ。「都営住宅の世帯要件・収入要件が壁になって行き場のない人が残っている。不当性を訴え、避難の権利を実現させるため提訴も覚悟している。頭を上げ、顔を上げて生きていきたい。支援する組織はゆるやかなものを作ってほしい」など、さまざまな課題や要望も出された。

 最後に代表世話人の加山久夫さんが「東日本大震災は地震、津波の二重苦。福島は原発・人災という深刻な問題が加わり三重苦だ。避難者はさらに国策に苦しめられ、社会の無理解・風化の五重苦。問題を見えにくくさせない。可視化し、理解を広げよう」とまとめた。



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