2017年09月22日 1494号

【福島産米検査「縮小」論/汚染隠し、被曝を強要/軍事費を削り命を守れ】

 今年に入り、政府が福島産米の全量検査を見直し、サンプル検査に切り縮めようとする動きが出ている。現在、3・11以前より高い放射線量の下で、内部被曝を含め日々被曝との「共存」を強いられている市民を一層危険に陥れる検査縮小を許してはならない。

生産者からも異論

 福島県産米の全量検査は2012年産米から導入。農協などの生産者団体、小売店、消費者団体、県で構成する「ふくしまの恵み安全対策協議会」が主体となって実施している。測定を迅速化するためとしてベルトコンベヤー方式の専用測定器を使用し、検出下限値は1キログラム当たり「25ベクレル未満」とされる。

 全量検査縮小への動きは、政府と消費者、生産者との「意見交換会」が昨年から始まったことで表面化した。「食品に関するリスクコミュニケーション〜食品中の放射性物質の検査のあり方を考える」と題したもので、主催は消費者庁、内閣府食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省。事故から6年経過し、農産物の放射能汚染が「低減」したとして、検査縮小への「国民の理解」を得るのが目的とされた。

 だが今年2月、都内での意見交換会では検査縮小に反対する意見が続出した。パネリストとして参加した福島県郡山市の農家は「検査結果などの情報がまだ消費者に十分に伝わっていない状況で検査を縮小すればマイナスにつながる」と反対。東京都八王子市の市民測定所「ハカルワカル広場」共同代表、西田照子さんも「原発事故の影響はまだ全容が解明されておらず、わからないことが多い」と検査の必要性を強調した。

 2012年から毎年、首都圏の消費者に対して行われているアンケート調査がある。福島県産食品を買うかどうかを尋ねるもので、2016年度の調査では「気にならない」「買う」の合計は39・8%と半数に満たない。一方「買わない」は23・2%。2012年調査時の30・4%からは減ったが、依然として4人に1人を占める。検出下限値未満による合格が「不検出」を意味するものでない以上、福島産を避ける消費者がいるのはやむを得ない。

チェルノブイリでは

 チェルノブイリ原発から北東に約175`b。ベラルーシとの国境に接する町ノボズィプコフで、原発事故から27年経過後の2013年段階でも食品測定が行われていたとの報告がある。やや古いが、2007年、ウクライナ共和国ナロジチ地区(チェルノブイリから約80`b)で行われた食品の放射能検査データによれば、事故後21年経ったこの時点でも、最も放射性物質が蓄積しやすい「キノコ類」で検出された最高値は1`グラムあたり6万4400ベクレル。キノコ類に次いで放射性物質が蓄積しやすい「ベリー類」で1`グラムあたり4300ベクレルが検出されている。データにはナロジチ地区保健検疫所所長の署名がある。ウクライナ政府が公式に認めた数字だ。

 放射性セシウム137や白血病を引き起こすストロンチウム90の半減期は約30年。チェルノブイリでさえ、これらの放射性物質はようやく半減期に達した段階だ。生産地表示の義務がない外食や総菜などの業務用に福島産食品が大量流通している実態を見ても、食品検査は拡大すべきだ。全国で市民測定所の取り組みを広げる必要もある。

命より軍事の安倍打倒

 政府は、福島県産米の検査縮小を打ち出した理由に検査コストを挙げる。2012〜2016年度の5年間で40億円かかったと言うが、年間にすれば8億円だ。国民1人当たり年間たった8円。軍事費で5・2兆円も予算要求する日本政府が、食品検査にかけるたった8億円が出せない―命より戦争の安倍政権の本質だ。

 被曝にさらされている市民の命を顧みず、大軍拡と戦争挑発に明け暮れる安倍を打倒し、命が最優先の政治へ早急に転換することが必要だ。

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS