2017年09月22日 1494号

【ジュゴン訴訟が勝利 9・3シンポジウムは大成功 翌日、沖縄県に申し入れ】

250人が参加

 9月3日、ウンケー(旧盆)初日の午後、忙しいにもかかわらず「世界は見ている―ユネスコ/IUCN調査団が沖縄に やんばるの森と辺野古の海を守ろう」シンポジウムと海勢頭豊コンサートに250人が参加。主催はジュゴン保護キャンペーンセンター(SDCC)などによる9・3シンポ実行委員会。ユネスコ/IUCN(国際自然保護連合)調査団が世界自然遺産の現地調査で来沖する時期に合わせたものです。翌日、地元紙は「現状訴え『道開ける』 辺野古新基地工事影響知るシンポ」(琉球新報)、「やんばる守る演奏とシンポ 海勢頭さんら訴え」(沖縄タイムス)と報道しました。

 来賓は、昨年9月IUCNハワイ会議に参加したお二人、稲嶺進・名護市長と安次富(あしとみ)浩・ヘリ基地反対協共同代表。稲嶺市長は「差し止め訴訟を闘う翁長雄志(おながたけし)知事を支え、来年2月の名護市長選挙で3期目を実現する」と決意表明。安次富さんは「8月21日のジュゴン訴訟の勝利判決(注)で明らかなように国際連帯が広がっている」と、辺野古埋め立て阻止が可能だと訴えました。

 特別報告はジュゴン訴訟原告団の東恩納琢磨・名護市議会議員。IUCNハワイ会議での決議をふまえて市議会決議を実現。IUCN本部に決議の履行を求める書簡を送り、同本部は「日本政府に4度の決議の履行を求めるとともに、必要ならば埋め立て土砂の外来種対策に協力する」と返書。うりずんの会(沖縄選出野党国会議員団)の政府交渉でIUCN決議の履行を求めたことなどを報告しました。

国際的展望を示す

 シンポのパネラーは真喜志好一(沖縄平和環境ネットワーク世話人)、桜井国俊(沖縄大学名誉教授)、吉川秀樹(SDCC国際担当)の皆さん。真喜志さんはジュゴン訴訟の取り組みの経過と勝利判決を説明。ノグチゲラが原告になっての訴訟は可能だが、原告の根気と米国内のカウンターパートナーが重要だと指摘しました。桜井さんは「辺野古・高江の基地建設と世界自然遺産は両立するのか」で、沖縄県はIUCN現地調査で「辺野古埋め立て土砂の外来種対策が重要」「米軍の北部訓練場でのオスプレイの訓練による被害」と「米国もやんばるの森・世界自然遺産の当事者である」を強調すべきだと主張。吉川さんは「ジュゴン訴訟は世界自然遺産と辺野古の海を守る」で、ジュゴン訴訟の国家歴史保存法や世界遺産条約は「市民の参加を保障している制度」なので、「自然保護を前面に出して、米国領事館などに手紙を出すべき」と提案。「米軍が法制度を無視しているならば、第三者のチェック機関である海洋ほ乳類委員会や歴史保存諮問委員会にNGOからレポートを出せば取り上げられる」。その取り組みを始めていると報告しました。

 議論をふまえて、「沖縄県知事への要請」を提案。(1)世界自然遺産推薦地域を保全する十分な緩衝地帯を設定すること(2)管理計画の対象に北部訓練場を含めること(3)オスプレイの配備を撤回すること(4)辺野古大浦湾を視察地に含めること(5)辺野古埋め立て土砂の外来種対策に取り組むこと(抜粋)を確認しました。

 3時間半のシンポジウムの合間に、海勢頭(うみせど)豊コンサート。やんばるをテーマに「ザンの海」「椎の川」「喜瀬武原(きせんばる)」など6曲を演奏。参加者は大いに元気づけられました。

 翌9月4日、沖縄県への要請行動で「知事への要請」を説明。現行の世界自然遺産の管理計画では登録の基準を満たせないと厳しく追及し、また、IUCNの現地視察に辺野古・大浦湾を含めること主張することを求めました(9/5沖縄タイムス、NHK沖縄などで報道)。
(ジュゴン保護キャンペーンセンター事務局長・蜷川義章)

(注)ジュゴン訴訟勝利判決

 2003年日米の環境保護団体やジュゴンが原告となり国防総省を相手に、辺野古基地建設は国家歴史保存法に反するとジュゴン保護を求めてサンフランシスコ連邦地裁に提訴した。15年、連邦地裁は「外交問題である基地工事の中断を命じる法的権限はない」と却下。原告団が控訴し、連邦高裁が今年8月21日、「請求は政治的ではない。原告には訴訟する資格はある」と地裁に差し戻しを決定。





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