2017年09月22日 1494号

【福島原発かながわ訴訟 来年7月結審へ/低線量被ばくの健康影響を追及】

 福島原発かながわ訴訟は11月17日から3回、約15人の原告本人尋問が行われる。9月7日の進行協議で来年7月19日の結審が決まり、来年中に判決の可能性も出てきた。また、来年2月8日には裁判官による現地検証が実施される。土壌汚染調査を積み上げ要請してきた結果で、関東圏の訴訟で実施が公にされたのは初めて。原告団長の村田弘(ひろむ)さんは「いよいよ判決までの全体像が見えてきた。これからがほんとの正念場だ」と語った。

 9月7日の口頭弁論には100人以上がかけつけ、75の傍聴席を埋めた。前回証言した聞間元(ききまはじめ)医師に対し国・東電側が反対尋問。焦点は低線量被ばくの健康影響で、政府が年間20ミリシーベルト以下は「影響が考えられない」として帰還政策を進める中、注目された。

 国側が主張したのは、〈確率的影響にしきい値なし(LNT)モデルは統計的な証明になっていない/フランスなどでは異論が出ている/同じ線量の被ばくでも一度に受けるより長期間受ける方が影響は低い/低線量被ばくリスクは喫煙や肥満など他のリスクの中に埋もれて取るに足らないもの〉など。東電代理人はLNTモデルのグラフの見方について質問するだけで議論を避けた。

 原告側は「低線量では他の疾病要因に紛れて統計的な有意差を検出しにくくなる、という問題であって、しきい値がないというのが国際的な流れ」「長期間の被ばくに対し人間の防御力は働くが、放射能による免疫力の低下は被ばく者の肝炎の統計で明らか」「国側が論拠とする報告書以降の原爆被爆者の死亡率に関する報告書で固形ガンに対するリスクにしきい値が認められなかった、など新たな知見が反映されていない」と反論した。

 国は、被ばくと健康障害の因果関係が疫学上明白であることをあくまで認めず、新しい知見も無視し、調査研究の必要性も否定する。低線量被ばくの知見をさらに広く積み上げ追及していけば、「影響が考えられない」の一点張りで真実を闇に葬りたい国を追い詰められることを示した。

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