2017年09月29日 1495号

【みるよむ(454) 2017年9月16日配信 イラク平和テレビ局in Japan アンバールの難民】

 2017年6月、サナテレビはイラク西部アンバール州州都ラマディの難民キャンプを取材した。イラク政府は、IS(「イスラム国」)に家族を殺され家を奪われた難民にまともな生活を保障していない。

 イスラム主義支配が強まる中で、女性にインタビューすることは以前よりずっと困難になっている。番組では、女性を対象にインタビューを試み、難民の苦しみと怒りを視聴者に伝えている。

 取材クルーは、この難民キャンプの現場に入って生活の様子をとらえ、ここで暮らす難民かその様子を聞きだしていく。

 最初に登場する女性は、ISの支配から逃れるために、中部のアマリア、アブグレイブ、そして現在のラマディと、住む場所を転々とせざるを得なかった。彼女はこのラマディの難民キャンプでも、「水がほとんどない」と訴える。イラクでは最高気温が摂氏50度を超える。水さえないとは、拷問を受けているのも同然の状態だ。

 若者には働く場がない。ISは子どもたちを学校に行かせなかったが、難民キャンプでも生活が厳しすぎて学校に通えない。

 アバディ政権はモスルなどでISを制圧したと宣伝するが、ISによる被害者にはこんなに冷淡な扱いをしているのだ。

 サナテレビはISから受けた被害について聞いていく。ある女性は「ISは私の息子を殺した。息子のいとこも殺した」。抱いた子どもを見せ訴える。「この子が生まれて1年と5日後に、父親は町の中心部の広場で殺された」

難民支援金を着服

 別の女性は、政府軍兵士であった息子がイラク西部アル・カイムでISに捕まえられ、今も戻ってきていない。もう一人の女性は、抱きかかえている小さな子どもの母親とその家族5人がISに殺されたと証言する。「イラク軍と警察のパンを焼いていたからだ」と言う。被害者たちの証言から、ISがどんなに残忍な暴力支配を続けてきたのかが伝わってくる。

 ISによって難民となった人は数百万人に及ぶ。しかし、イラク政府当局者は難民の支援に充てるべき資金を着服している。

 そんな腐敗したアバディ政権に、日本政府は数千億円の援助を与え支えている。人間らしい暮らしを求めるイラク市民に日本から連帯し、利権確保のための「援助」に反対しなければならない。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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