2017年09月29日 1495号

【ミリタリー・ウォッチング 朝鮮危機―軍事行動の扇動 背後に軍産政複合体の巨利】

 朝鮮半島をめぐる現在の危機を中断させるには「弾道ミサイル発射、核実験」と「米韓合同演習など周辺での軍事行動」を同時に中止すること以外にない。どちらかが先ではなく、「同時行動」が原則だ。だが、この「同時行動」は、説明もなく「非現実的」と排除されている。巨利のために、「脅威」と「危機」の消滅を望まない勢力が人びとを欺く論理をつくり出していることは間違いない。

 米国の軍産政複合体は、戦後の一貫した「核の傘」に加えて1980年代から新しいコンセプトの「傘」シリーズの本格的開発に乗り出した。戦略的防衛構想(SDI、通称「スターウォーズ計画」)である。

 だが、巨費を投じて開発、製造したものの、冷戦後の世界でこの高価すぎる「商品」を販売できる商機はなかなか訪れなかった。朝鮮の核開発を止めるチャンスが幾度もあったにもかかわらず、見逃し続けてきたのは、「新たな脅威」の存在を求める国際軍産政複合体の暗躍があったとの疑惑が確実に存在する。

 そして今、「傘」シリーズは、大(大陸間弾道弾、長射程の中距離核ミサイル対応)、中(中距離戦域ミサイル対応)、小(短射程の戦場ミサイル対応)の「傘」を新製品としてそろえ、北東アジアを中心とした市場での商機を得るに至っている。

 防衛省の2018年度予算の概算要求は、この国際的な軍産政複合体の欲望を色濃く反映した。要求額は過去最大の5兆2551億円。伸び率は今年度当初予算比2・5%増で、第2次安倍政権発足以来6年連続の要求増だ。

 

5・3兆円の大軍拡

 内容も「高額商品」オンパレード。目玉の一つとなる弾道ミサイル防衛(BMD)の新システム「イージス・アショア」は、現在海上自衛隊のイージス艦に搭載している海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を陸上に置く新システム。概算要求では項目のみで、1基約800億円とされる費用は明示せず、年末までに確定というインチキぶり。

 その他、ミサイルやレーダーを統制する自動警戒管制システムの改修費に4年間で107億円。「迎撃ミサイルの射程を2倍程度に延ばす」改良型SM3ブロック2Aなどの取得費は5年間で657億円。迎撃ミサイルPAC3の改良型の取得に205億円と並ぶ。さらに、一時「導入見直し」としていた無人偵察機グローバルホークの取得にも乗り出した。

 「オキナワ島しょ戦争」を想定し、自衛隊配備・増強(18年3月に発足する水陸機動団など)が進められる沖縄・南西諸島関係では新たなミサイル兵器・研究が盛り込まれた。「島しょ防衛用高速滑空弾」(高速で滑空して目標を攻撃する新ミサイル。離島間での攻撃用)と「島しょ防衛用新対艦誘導弾」(「海上優勢」を確保するための対艦攻撃ミサイル弾)の開発に向けた要素技術研究費で、それぞれ100億円、77億円を計上。さらに、南西警備部隊の施設整備に552億円。最新鋭ステルス戦闘機F35を6機881億円。また、南西諸島防衛強化としてオスプレイ4機457億円も計上した。

 まさに大軍拡である。軍拡は新たな軍拡を呼ぶ。住民の安全確保はそこにない。住民の避難計画も示さない「島しょ防衛」とは何か。「ピストルの弾をピストルで撃ち落とすようなもの」でしかない「ミサイル防衛」は誰のためのものか。一つひとつ明らかにしなければならない。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS