2017年09月29日 1495号

【ショボ目ときどきギョロ目(3) 笑わせない 嗤(わら)い倒そう】

 わが盟友、原発難猫ロックが鼻柱に血をにじませて帰って来た。ティッシュペーパーにしみ込ませた「マキロンs」を押し当てながら、「ダメじゃん。戦闘行為は」と諭した。動物病院の先生には「正面から戦ったんだ」と褒められた、と娘はいう。確かに、田舎で一緒に暮らした先代の「のり君」は、いつも背中や後ろ脚に傷を負って帰って来た。結局、それが元で死んでしまったけど…。

 突然やって来た秋に急かされるように鳴く蝉。その声をかき消す米空母艦載機の爆音。厚木基地からそう遠くないわが借家も、このところ騒々しい。

 テレビをつければ、北朝鮮のミサイル。したり顔の軍事評論家。「圧力強化、圧力強化」と繰り返す安倍首相の国士面…。「なぁ、ロック。ケンカは生き物には付き物かい」。夜、枕元で箱寝しているロックに訊いてみる。

 「攻められれば戦う。そりゃぁ当然。目の前でうぉ〜と脅されたら、オイラだって戦闘態勢に入る。だけど、手を出すのは最後の最後。手を出せば、どっちも痛い目に合うからニャン。それに、俺たちの場合は、常に一対一。武器は手と歯だけだ」

 そうか。そうだな。空母だ、戦闘機だ、ミサイルだ、原爆だ、国ごと消滅だ、なんて脅し合っているのはニンゲンだけだ…。

 生き残るためには、米との直接交渉。そのためには米本土に届く弾道ミサイルと核だ、と腹を決めている北朝鮮。ミサイルを発射すれば、日本の上空を横切るのは当然だろう。その度に「空襲警報」まがいの「Jアラート」やらで不安を煽り、800億円ものイージス・アショアとやらをポンと2基。3月に打ち切った原発避難者の住宅提供費用の20年分だ。防衛予算5兆2千億円とやり放題。「圧力強化」の先には何がある。消費期限切れの政権延命か。「核の仲間入り」か。高笑いしているのは誰だ。

 桐生悠々の『関東防空大演習を嗤う』を読み直してみる。

 「国民は挙げて、若しもこれが実戦であったならば、その損害の甚大にして、しかもその惨状の言語に絶したことを、予想し、痛感したであろう」
 84年後のわれら国民は、何を予想し、何を感じているだろう…うとうとしているうちに、歯周病の奥歯が泣いて目が覚めた。今夜は、ギョロ目後ショボ目だ。

(南相馬市の原発難民 村田弘<ひろむ>)


オイラは、あくまで「専守防衛」
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