2017年10月06日 1496号

【安倍のデタラメ解散/「首相の専権事項」は真っ赤なウソ/憲法破壊、国政私物化だ】

 臨時国会冒頭での衆議院解散を強行した安倍晋三首相。急ごしらえの解散理由を並べてはみたものの、頭のなかにあるのは「今なら選挙に勝てる」という皮算用でしかない。そもそも、衆院解散は「首相の専権事項」ではない。何が「国難突破解散」だ。これは疑惑隠し解散であり、憲法を踏みにじる国政私物化解散なのである。

 9月20日、国連総会で演説した安倍首相は持ち時間の8割を「北朝鮮非難」に費やし、「必要なのは対話でない。圧力だ」と訴えた。同じく国連演説で「米国と同盟国を守らねばならない時、北朝鮮を完全に破壊する以外の選択肢はない」と豪語したトランプ米大統領に同調し、「米国の立場を一貫して支持する」と明言したのである。米国が武力行使に踏み切った際には日本も参戦するということだ。

 気分はすっかり戦時モードの安倍首相。朝鮮半島情勢の緊迫化を政権浮揚に最大限利用しようとしている。今回の解散総選挙がまさにそうだ。ある閣僚経験者は「選挙期間中に弾道ミサイルが発射されれば、『自民党頑張れ』の世論になるのではないか」とあけすけに語る(9/19朝日)。

 参院自民党幹部はこうも語っている。「今は内閣支持率が上がり始めており、『しっかり北朝鮮対応してますよ』と見せることが大切だ」(9/16朝日)と。国連での演説や各国首脳との会談は「世界のアベ」を大宣伝する政治ショー、すなわち最近はやりの「日本スゴイ系番組」の安倍バージョンだったのだ。


醜悪な開き直り

 勇ましい言葉を吐けば自分の株が上がると錯覚し、戦争挑発を喜々として行うような人物が総理大臣でいる−−それこそが今の日本にとっての「国難」というものだ。

 さすがに今回の解散については多くメディアが「大義がない」と批判的だ。自民党内からも「何も仕事をしていないまま解散なんて、党利党略でしかない」(9/19朝日)といった声が上がっている。しかし、いくら正論をぶつけてみても、安倍首相やその取り巻き連中には「蛙の面に小便」であろう。

 たとえば、ワイドショー番組に出まくっている安倍御用記者筆頭の田崎史郎(時事通信社特別解説委員)は、開き直りとしか思えないコメントを連発している。いわく「大義は、安倍政権の力を強めること」「政治はね、しょせん党利党略なんですよ」。

 産経新聞も「北朝鮮情勢を理由に総選挙を躊躇(ちゅうちょ)すれば相手の脅しに屈し、日本の民主主義がゆがめられる」(9/18主張)といった屁理屈以下の安倍擁護をくり広げている。森友・加計疑惑から逃げ回り、説明責任を果たさない安倍首相の振る舞いこそ、この国の民主主義をゆがめていると思うが…。

 「解散権は総理にあるのだから批判しても仕方ない」と言う者もいる(松井一郎・日本維新の会代表など)。ちょっと待った。解散は「首相の専権事項」だなんて誰が決めた。日本国憲法にそのような規定はない。大体、総理大臣の都合でいつでも解散できるのなら、国会は国権の最高機関ではなくなってしまう。

安倍打倒のチャンス

 憲法69条は内閣不信任案が衆院で可決された時の対抗措置として、内閣に解散の権限を与えている(首相ではない)。ただし、現憲法下で行われた過去23回の解散のうち、69条にもとづくものは4回だけ。ほとんどは7条3項(天皇の国事行為)を根拠にした解散だった。

 天皇の国事行為には内閣の助言と承認が必要であり、内閣が責任を負う。よって解散権は内閣の長である首相にある−−というのが7条解散を正当化する理屈である。これはかなり強引な憲法解釈であり、その是非は裁判でも争われたが、最高裁は「司法裁判所の権限外」として憲法判断を示さなかった。

 衆院の解散には「民意を問う」という民主的な要素がある。したがって「69条の規定に限定されない」というのが主流学説とされる。もちろん、首相に自由裁量権があると解されてきたわけではない。重大な政治課題が新たに生じた場合、政府が基本政策を根本的に変更しようとする場合に限って、主権者の意思を問うために行われるべきものだ。そのような「大義」を欠いた解散は憲法違反というほかない。政権与党による「いま選挙をすると有利だから」解散が慣行となっていること自体がおかしいのである。

   *  *  *

 安倍政権は憲法53条の正式手続きを踏んだ野党の臨時国会召集要求を3か月以上も放置したあげく、召集即解散という奇襲に打って出た。国会審議で数々の疑惑を追及されることを嫌ったのだ。これが憲法への挑戦、権力の私物化でなくて何であろう。

 「今なら勝てる」と解散総選挙に踏み切った安倍首相。市民をなめきった行為が身の破滅を招いたと後悔させてやろう。きたる総選挙は「安倍打倒」を実現する大チャンスなのだ。      (M)
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