2017年10月13日 1497号

【みるよむ(456) 2017年9月30日配信 イラク平和テレビ局in Japan 政府は水と電気を供給しろ ―ディヤラ州難民の怒り―】

 2017年7月、サナテレビはイラク東部ディヤラ州から逃れてきた難民のキャンプを取材した。一般に難民キャンプというと、粗末なテントでゴミが散らかっているといった印象を持たれることが多いだろうが、ここでは、プレハブの住居が並び、電線が引かれ、街灯も設置されている。住環境はそれほど悪くないのでは、と見えるかもしれない。

 ところが、身を寄せているディヤラ州の難民が真っ先に要求しているのは電気だ。この難民キャンプには電気が来ていない。正確に言うと「1日24時間の内、電気が来るのは1時間だけ」という状態なのだ。

 ある難民は「プレハブの部屋はとても暑い」と訴える。映像が撮影されたのは7月。視聴者のみなさんはよくご存じと思うが、イラクでは夏には気温が摂氏50度にもなる。そんな高い気温の下で、電気が来ずクーラーも動かないプレハブ住宅で暮らすことがどんなに非人間的な状態か、容易に想像がつく。

 プレハブの中があまりに暑いので、子どもたちのために地面に水をまいて温度を下げるといった対応に追われている。ある女性は「気温が高いために死んだ子どもがいる」と訴える。

 子どもが死ぬほどの事態なのに、イラクの行政当局は何の対応もしていない。当局は難民を切り捨てても平気だ。キャンプに来て3か月たっても、「政府当局者は誰も調査に来なかった」という。あまりにひどい扱いに怒った難民の1人は「サナテレビには難民の声を伝えてもらいたい」と声を強める。

政府の棄民は共通

 インタビュアーのサジャド・サリームさんは「難民の増加を『これは人口統計上の自然な変化の過程なのだ』とごまかす政治家もいる」と語る。米軍・イラク軍の対市民無差別攻撃、IS(「イスラム国」)の暴力支配のために、故郷を追われ難民となる人びとは増加している。それを、まるで人口の自然増のように言ってのける腐敗政治家の感覚は許しがたい。

 こうしたイラク政府の難民の扱い方からは、東北大震災・福島原発事故の被災者・避難者に対する日本政府の仕打ちと同じ発想が見て取れるのである。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



 
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