2017年10月13日 1497号

【総選挙の最大争点は9条改憲 「朝鮮危機」で戦時モード許すな 安倍も小池も改憲・戦争法推進】

 9月28日、安倍首相は衆議院を解散した。9条改憲体制と国家私物化再構築のための大義なきでたらめ解散だ。この総選挙は、戦後初めて9条改憲が争点になる。戦争か平和かの重要な岐路の選択がつきつけられている。選挙情勢は「希望の党」設立―民進党解体で急展開しているが、メディアが焦点とみる小池「希望の党」も明らかな改憲政党だ。改憲・戦争法に反対する勢力と市民との共闘で改憲勢力を3分の2未満に抑え、安倍らの野望を打ち砕かなければならない。

戦争あおるな

 安倍は、解散を表明した記者会見(9/25)で、朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の核・ミサイル「脅威」をあおり立て、「国難突破解散」とぶち上げた。6か国協議などの対話は意味がないとして、「あらゆる手段による圧力を最大限まで高めていく」と述べた。「朝鮮危機」をあおって政権浮揚のテコにするのは安倍の常套手段だが、解散の口実にまで使うのは、総選挙で9条改憲への合意形成をはかろうとしているからだ。

 国連総会(9/20)での安倍の演説は異様だった。17分間の持ち時間の大半を朝鮮への非難に費やし、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長を名指しして「史上最も確信的な破壊者」と罵倒。「必要なのは対話ではなく圧力」と何度も繰り返した。そして、トランプ米大統領による「北朝鮮完全破壊」という大規模軍事攻撃示唆演説を「一貫して支持」とまで明言したのだ。

 安倍の演説は、朝鮮を意図的に挑発し、経済制裁にとどまらない武力行使=軍事行動まで視野に入れ、戦争をけしかけるものだ。事実、安倍とトランプは電話協議で「2国間の断固たる相互防衛協力の約束を確認」(9/3)している。安倍は、朝鮮を挑発し、戦争法の発動による集団的自衛権の行使を狙っている。

自衛隊明記で死文化

 安倍が5月に打ち出した9条改憲は、憲法9条1項(戦争放棄)・2項(戦力不保持・交戦権の否認)を残し、3項を追加し、自衛隊を明文で書き込むものだ。狙いは、2項の削除、国防軍創設という自民党改憲草案では国民投票で勝てないと見て、9条2項の死文化をめざすところにある。石破茂元防衛相は「仮に3項に『前項の規定にかかわらず』って入れれば、(9条2項は)死文化する」と正直に指摘する。

 戦争法で集団的自衛権行使の道が開かれたが、政府自身現憲法下では「集団的自衛権行使は限定的である」と言わざるをえず、制約がある。3項で自衛隊を明文化することでこの制約を取り払おうともくろんでいる。そのために、総選挙で改憲勢力の3分の2以上の議席を確保しつつ、「北朝鮮の脅威」をあおり現憲法が邪魔していると演出したいのだ。

 この背後に、軍需産業―グローバル資本の強い意思が働いている。朝鮮危機を口実に攻撃用兵器の購入等で過去最大となった日本の軍事費5兆2551億円(2018年度概算要求)の最大の受益者であり、海外権益確保のためにいつでもどこでも派兵―武力行使可能な「普通の軍隊」を必要としているからだ。

 安倍は、記者会見では公明党への配慮、世論を考えて改憲に触れなかった。一方、同日のNHK番組などで公約に9条改憲を明記すると発言。それを受けて、自民党は公約の柱となる主要6項目をまとめ、全国幹事長会議(9/30)で示した。1番目に「わが国の平和と安全を守り抜く」とし、6番目の「国の骨格を整える」に自衛隊明記を含む9条改憲や緊急事態条項を盛り込んだ。まぎれもなく総選挙最大の争点は、9条改憲を許すのか否かである。

好戦・ヘイトの小池

 安倍に「憲法改正には前向き」と評された小池東京都知事ひきいる「希望の党」。メディアは安倍の対抗軸≠ナあるかのように報道する。

 しかし、小池本人も希望の党も、安倍と同じ改憲勢力で新自由主義の立場に立つ。参加議員の多くは右翼組織日本会議等に属する改憲派だ(表1)。小池は「東京に核ミサイルを」(『Voice』03年3月号)と主張し、秘密保護法も戦争法も賛成した札付きの好戦的戦争推進論者である。



 さらに、関東大震災で虐殺された朝鮮人犠牲者への追悼メッセージを都知事として初めて拒否したヘイト肯定の歴史修正主義者である。希望の党公認には「『憲法改正反対』『安全保障関連法廃止』を主張する候補は公認しない」(9/28朝日)と踏み絵を踏ませる徹底ぶりだ。対抗軸どころか、この選挙で小池、それと連携する維新らの台頭を許せば、誕生するのは戦前の大政翼賛会につながるような極右2大政党の悪夢だ。

 また、安倍の朝鮮危機扇動―戦争挑発に呼応し、副総理である麻生は、朝鮮半島からの難民を武装難民≠ニ描き、「自衛隊の防衛出動で射殺を真剣に検討」(9/23)と常軌を逸した発言を行っている。

 軍事衝突で、犠牲になるのは朝鮮・韓国そして日本の市民だ。9条改憲がもたらすものは、市民の人権も命も一顧だにしない戦争国家だ。安倍や小池らの9条改憲を絶対に許してはならない。

 安倍の解散には、世論の70%が解散理由に納得していないと圧倒的だ。同時に不支持39%、支持36%(9/26〜9/27朝日)をはじめ、各紙とも再び不支持が上回った。

 改憲推進の自公も、希望の党、維新も拒否し、市民の力で改憲・戦争法に反対する共闘を強め、勝利させよう。

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS