2017年10月27日 1499号

【ICANノーベル平和賞/核禁止条約反対の安倍はだんまり/「独自核武装」の野望が背景に】

 2017年のノーベル平和賞は、国際非政府組織「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」に授与されることが決まった。市民の立場から核兵器禁止条約の制定に主導的な役割を果たしてきたことが評価されての受賞である。同条約の制定に反対してきた安倍政権。その醜悪な姿をICANの平和賞受賞は浮かび上がらせた。

反応薄い日本政府

 ICANは平和や軍縮、人権などの問題に取り組む約100か国・470団体で構成。日本からは「ピースボート」など7団体が参加している。史上初めて核兵器を非合法化する核兵器禁止条約の制定を目指して広島や長崎の被爆者と連携し、今年7月の条約採択に貢献した。

 ノーベル賞委員会は授与理由を「核兵器の使用がもたらす破滅的な人道面での結末を人びとに気づかせ、条約にもとづく核兵器禁止の実現へ画期的な努力を重ねてきた」と説明した。また、この平和賞が核保有国や条約不参加国に対するメッセージであることも強調している。

 被爆者たちはICANの受賞を我が事のように喜んだ。ICANの側も「被爆者は条約交渉でも本当に効果的な提唱を行ってきた」(ペアトリス・フィン事務局長)と、その貢献を讃えた。まさに「市民社会の断固たる努力」(グテーレス国連事務総長)が認められての受賞といえる。

 ところが、日本政府の反応は驚くほど薄い。外務省が「喜ばしく思う」との報道官談話を出したのは授賞決定の2日後。安倍晋三首相は現在に至るまで言及を避けている。カズオ・イシグロ氏へのノーベル文学賞授与が決まった際には、その日のうちに祝福談話を出していた。わかりやすすぎる黙殺である。

 理由ははっきりしている。安倍政権は核兵器禁止条約の制定に一貫して反対してきた。核兵器違法化の国際的潮流に反し、“核兵器の保有や使用は認められる”との立ち位置だ。ICANの受賞でその姿勢に注目が集まり、批判されることが嫌なのだ。

安倍の意向で不参加

 核兵器禁止条約は国連加盟国の6割以上にあたる122か国の賛成で採択された。条約の特徴は、すでに禁止条約が発効している生物・化学兵器や対人地雷などの非人道兵器と核兵器を同列に並べることで、「核は絶対悪」と認定した点にある。

 前文で「核兵器の使用による犠牲者(ヒバクシャ)ならびに核実験による被害者にもたらされた苦痛と被害を心に留める」と明記しているように、条約は核兵器の非人道性を強くうたっている。禁止項目には、核兵器の「開発、実験、製造、獲得、保有」だけではなく、「使用、あるいは使用をちらつかせての威嚇」も盛り込んだ。核抑止論の明確な否定である。

 この画期的な条約に、唯一の戦争被爆国である日本政府は反対した。制定交渉にすら参加しなかった。自任してきた「核保有国と非保有国の橋渡し役」を放棄したのである。ちなみに、国連で反対演説を行った高見沢将林(のぶしげ)・軍縮大使は、戦争法(安保法制)の原案づくりを主導した元防衛官僚である。

 不参加決定の背景には安倍首相の意向があったと報じられている。条約に強硬に反対しているトランプ米政権を刺激するようなことはするべきではないと判断したというのだ。だが、反対の理由はそれだけではない。日本政府自身が核武装の野望を抱き続けているのである。

被爆者への裏切り

 「自衛権の範囲を超えない限り、核兵器保有は憲法に違反しない」。1957年の国会答弁で、当時の岸信介首相はこう述べたことがある。この考えは岸の孫にあたる安倍首相に受け継がれている。2016年4月、「核兵器でも、必要最小限にとどまるものであれば、保有することは必ずしも憲法の禁止するところではない」とする政府答弁書を閣議決定した。

 核兵器の材料となるプルトニウムを大量に保有し、軍事転用可能なロケット技術を有している日本は潜在的な核兵器保有国である。この核カードの実用化を安倍政権は狙っている。一人前の帝国主義国として「核兵器の使用をちらつかせての威嚇」を行えるようになりたいのだ。

 「北朝鮮の脅威」を最大限に利用し、対抗手段としての核武装議論に弾みをつけたい安倍政権。連中にとって核兵器禁止条約は悲願達成の障害物であり、必死に意義をおとしめてきた。そのウソが今回のノーベル平和賞でばれてしまった。よって下手に反応せず、ニュースが消えるのを待っているというわけだ。

   *  *  *

 10月9日、ICANは国連本部で記者会見を開き、日本政府が核兵器禁止条約に署名・批准しない場合、「長年、核廃絶に取り組んできた被爆者への裏切りになる」と批判した。フィン事務局長は、衆議院選挙で「核兵器を取るのか、禁止に向かうのか選択できるよう」議論してほしいと訴えた(10/7東京)。

 核廃絶に敵対する安倍政権。そんな奴らの延命策動を許してはならない。   (M)



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