2017年11月03日 1500号

【第48回衆院選 安倍自公は現状維持=^市民と野党共闘を日常から/9条改憲を阻止する大運動へ】

 暴風雨が吹き荒れる中で行われた衆院選。自公与党は改選前議席をほぼ確保した。だが有権者の多数が自公政権を支持したのではない。小選挙区制に守られた結果にすぎない。政権批判票がまとまれば自公政権を引きずり下ろすことができた。1対1の選択となった選挙区での勝利が示している。安倍政権は改憲政党を抱き込み9条改憲に向け拍車をかけるに違いない。9条を死文化することにイエスかノーか。争点を明確にした市民・野党共闘の恒常的な運動が問われている。

「3極対立」と小選挙区

 安倍が狙った「いまなら勝てる」解散は、結果としては思惑通りになった。465議席のうち自公政権は合わせて313議席、定数10減の中で、改選前の318席とほぼ同数を確保した(公明は5減)。投票率も戦後最低であった前回(14年小選挙区52・66%)とほぼ同じ水準、53・68%。半数近い有権者は意思を示さなかった。



 台風が低投票率の原因ではない。過去の選挙でも、悪天候よりも、争点が明確にならない時に投票率は下がった。今回の争点は、5年に及ぶ安倍政権への審判だ。改憲や戦争法制、原発再稼働、格差拡大のアベノミクス、雇用破壊など、すべてが問われなければならなかった。まず直近の共謀罪強行、加計・森友疑惑隠しが問われるはずだった。明確な対立点のもとに与党対野党共闘という選択肢が全国で示されれば、投票率は伸び、自公政権が現状を維持できるはずがなかった。

 この野党共闘を潰したのが、希望の党結成と民進党解体合流であった。前原は、あからさまに共産党との共闘を否定した。マスコミは希望の党、日本維新の会を政権批判政党として扱い、「3極対立」と称した。だが、両党とも安倍の政策と違いはない。改憲賛成、原発再稼働賛成、戦争法支持を明確にする党だ。

 自公批判票は割れた。結局3勢力の争いとなった選挙区は、ほとんど自公が制している(毎日新聞、177選挙区中137議席)。自民は得票率50%を切っても議席を得た。20議席を獲得した東京では、15選挙区がそうだった。加計(かけ)疑惑の中心人物、24区の萩生田光一、11区の下村博文も得票率は5割を切っている。「3極対立」は、本来の2極対決の選択を見えなくした。

市民・野党共闘

 2極で闘った選挙区はどうか。12の選挙区がある北海道。1対1の争いになったのは7選挙区。このうち5選挙区で自民党候補を破った。原発再稼働反対の運動を軸に県知事選で統一候補を当選させた新潟。6選挙区のうち、野党共闘統一候補となった5選挙区で3勝した。福島1区でも自民を破った。新基地建設の是非が明確な対決点の沖縄。事実上の1対1で争う。第4区を除き、他の3区でオール沖縄候補が自民党候補を破った。

 小選挙区制が導入された時、2大政党による政権交代が容易だと言われ、自民党が政権を追われたことも確かにあった。だが、野党が複数の場合、政権批判票が分散し死票となる。小選挙区で78%の議席を占めた自公だが、得票率に応じて議席配分される比例区では49%にとどまっている。有権者総数に対する得票率は3割にもならない。それで7割近い議席を占めることができるのが小選挙区制なのだ。

 市民・野党共闘の意義は、各政党票の足し算にとどまらない。争点が明確となった新潟選挙区では、前回に比べ投票率が9ポイント近く上昇した。選択肢を明確にすることで有権者の判断を促すことができる。とはいえ、主義主張の異なる政党が自らの候補者を下ろし統一候補を立てるのは容易なことではない。だが、それを乗り越える市民による選挙運動が増えている。

 15年12月、民進・共産・社民・生活の党(当時、現自由党)等の野党統一候補擁立で闘おうと「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(市民連合)ができた。戦争法廃止のためには自公に勝てる候補がいる。市民連合の取り組みは各地に広がった。政党間の取り引きによる「共闘」では限界がある。市民が共に闘う態勢が必要だ。有権者が政党のあり方を規定する。こうして多くの市民運動が、政党、候補者を育てる経験を積んだ。

9条改憲阻止へ

 選挙は終わった。だが闘いはこれからだ。安倍は、11月1日に特別国会を召集。首班指名をへて、第4次安倍内閣を発足させる。公約パンフに掲げながら、街頭演説では一切口にしなかった「9条改憲」へと踏み込んでくる。「希望の党をはじめ他党とも話し、より多くの賛同を」と、改憲翼賛体制をつくる構えを見せた。朝日新聞の調査によれば当選議員の約8割、359人が改憲賛成と答えている。

 だが、民意は違う。「政権継続を望む」のは34%、「そうは思わない」51%である(朝日調査)。9条改憲は賛成37%に対し、反対40%だ。選挙過程で再生された市民・野党共闘を強化し、国会内外をつなぐ恒常的な運動を続けることが問われている。

 今回、67選挙区で自党候補を下ろし野党共闘の環境を整えた共産党は、比例区で10議席を減らした。だが、「立憲民主党が野党第1党になれば、容易に改憲は進められなくなる。共闘を進めてよかった」(志位委員長)と総括している。立憲民主党は必ずしも「9条改憲絶対反対」ではない。安倍政権の「集団的自衛権容認の下での改憲」に反対の立場だ。政党の動揺を許さず、共闘を支えるのは市民の行動以外にない。

 9条改憲、イエスかノーか。明快な論点を示すことだ。9条改憲反対の声を、より大きく、そして誰にも見えるようにする取り組みを広げなければならない。改憲阻止3000万署名、安倍打倒署名で、一人ひとりとの対話を通じて主権者としての選択を迫ろう。安倍政権打倒の力は、そうした取り組みから再構築される。

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