2017年11月03日 1500号

【沖縄辺野古新基地阻止へ 炎上ヘリ飛行再開に怒り噴出 総選挙 新基地許さぬ民意固く】

 沖縄県東村(ひがしそん)高江の民間地での米軍ヘリ炎上から1週間。米軍は県民の強い反対にもかかわらず、事故機と同型機の飛行を再開した。

 10月18日午前11時過ぎ、東村高江の上空に米軍大型輸送ヘリCH53Eが爆音とともに姿を現した。わずか1週間前にその真下の民間牧草地で同型機が墜落炎上事故を起こしたばかり。事故現場には黒く焼け焦げた事故機が横たわっていた。事故の衝撃冷めやらぬうちの飛行再開。不安な毎日を送る地元住民をあざけ笑うようだ。高江の住民からは「堂々と飛ぶなんてふざけてる。とんでもない話だ。悔しくて泣けてくる」と怒りの声が上がる。仲嶺久美子区長も「区民がショックを受けて傷が癒えない時期の再開に憤りを感じる。米軍は安全だと言うが地元の気持ちを踏みにじっている。区民をないがしろにして自分本位だ」と批判した。


口だけの日本政府

 11日の事故直後、総選挙への影響を避けたい安倍晋三首相は米軍への申し入れを指示。小野寺五典防衛相も「安全が確認されるまで運用を停止するよう」と米側へ強い姿勢≠見せた。米軍は16日、「調査結果が公表できるまでは再開しない」と明言した。ところが、翌17日夕方には一転。米軍は、整備記録の確認のみで「運用上の問題は確認されなかった」とし、事故の原因も示さない一方的な「安全宣言」で飛行が強行された。政府は「遺憾」の一言だけで、抗議も対策もなく、口先だけの追認姿勢があらわになった。

 地元高江区や東村はじめ、沖縄県、国が中止を求めても、やりたい放題の米軍に翁長雄志(おながたけし)知事は18日、高江周辺のオスプレイパッドについて「私たちの切実な思いは使用停止、むしろ撤去だ」と怒りを噴出させた。これまで高江のオスプレイパッドについて態度を明確にしてこなかった翁長知事が踏み込んだ発言をした背景には、高江区、県議会による使用中止要求決議に示される今まで以上の県民の憤りがある。県は今後、住民生活への影響の大きいN4地区とH地区の計3か所のオスプレイパッド使用禁止を優先して求めていく。高江住民からは使用禁止を求める知事発言に「大きな一歩」と期待する声も上がる。

もう基地はいらない

 政府と米軍に対する怒りはこれだけではない。10月19日には原因究明されないまま米軍による事故機体の運び出しが始まり、20日には事故現場の土壌までも搬出した。沖縄県と防衛局は健康被害の懸念が広がった放射性物質(ストロンチウム90)などの飛散調査で、20日にようやく事故現場に立ち入り土壌採取を始めたが、米軍に制限されたあげく土砂を持っていかれる始末だ。

 民間地で事故を起こしておきながら、一方的に立ち入りを規制し証拠物まで持ち去ってしまう。犯人が警察の目の前にいるのにまったく何もできない。すべて日米地位協定の名で強行される。これほどの屈辱を日本政府は改定も求めず容認しているのだ。

 高江では、事故後も様々なところで生活への影響が続く。事故現場となった牧草地を所有する西銘(にしめ)晃さんは、30年手塩にかけて育ててきた肥沃な牧草地を踏みつぶされ、見るも無残な姿に変えられた。事故直後、放射性物質の健康への懸念から高江小学校児童3人が登校を控えた。修学旅行生の受け入れなどを行う民泊事業にもキャンセルが相次いだ。事故現場から約400b先には、県民の水がめである福地ダムが位置し、あわや停止となる危険性もあった。基地と隣り合わせの生活がどれほど危険なものか。

 10月15日、高江の北部訓練場メインゲート前で行われた米軍ヘリ墜落緊急抗議集会で、ヘリパッドいらない住民の会の安次嶺(あしみね)現達さんは「いつ落ちるか分からない恐怖にどれほど苦しめられたか。原因究明とかではない。もう基地はいらない」と力を込めた。

オール沖縄3選挙区勝利

 総選挙の最中、県民を震撼させた高江ヘリ炎上事故。その影響は、選挙結果にも表れた。県外では「自民圧勝」と報道される中、沖縄では4選挙区のうち3選挙区で新基地建設に反対するオール沖縄候補が当選した。残念ながら4区のオール沖縄候補ナカザト利信さんは互角の争いを繰り広げながらもあと一歩及ばず、すべての区でオール沖縄の議席を占めることはできなかったものの、改めて「辺野古反対」の民意の強さが示された。

 翁長知事も「民意がしっかり示されたのではないか。(辺野古を抱える)3区で勝利したことも大きい。名護市民の意志がほぼ数字に表れてきた」と述べる。稲嶺進名護市長も「市長選にとっても非常に大きな力になる」と来年2月市長選へ向け弾みがついたことを強調する。 (A)

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