2017年11月10日 1501号

【みるよむ(460) 2017年10月21日配信 イラク平和テレビ局in Japan 誘拐され殺される イラクの子どもたち】

 イラクでは、治安が一向に改善されない。最近、子どもを誘拐したり殺害するという凶悪犯罪が相次いでいる。2017年8月、サナテレビはこの深刻な問題についてバグダッド市民にインタビューを行った。

 市民たちは、子どもを誘拐し殺害する事件の続発を衝撃的に受けとめている。ある市民はその実態を「誘拐事件のほとんどは子どもの親戚によって起こされている」と語る。そして、子どもに顔を知られてしまったからと「犯人は子どもを殺してしまう」。

 別の市民も「こんな事態はイラク社会で初めて起きていることだ」と嘆く。「こうした状況は、イラクが直面している社会的な問題、特に治安の悪化や石油価格の下落による経済危機、全土に広がってしまったテロなど、すべてが原因になっている」と指摘する。戦争と石油利権の強奪にあけくれるグローバル資本とイラクの政治家たちが生み出した荒廃の代償を、子どもたちの命で支払わせているのに等しい。

 警察は、政府は、一体何をしているのか。子どもの命を平気で奪う重大犯罪を野放しにしているのだろうか。

 この点についてもう一人の市民は「政府は犯罪から目を背けている」と批判する。こんな状態だから、子どもが誘拐されたら大金を払って解放させるしかない。法律もまともに機能しない現実に、この市民は誘拐犯たちに対して「自分の子どもをこんなふうに傷つけるられるのか」と怒りをあらわにする。

背景に深刻な社会状況

 現在イラクでは、人びとに寛容さがなくなり、互いを傷つけあい、疑心暗鬼になっていくような社会状況が作り出されている。子どもの誘拐問題だけではない。市民たちは、治安の悪化を恐れて国外に出て行く人の増加や人間の臓器を売り買いする「ビジネス」の流行といったイラク社会の状況を告発している。

 子どもの誘拐、殺害が増加している背景には、アバディ政権が宗派や民族間の対立をあおり、グローバル資本の利益を優先して貧富の格差を増大させていることがある。サナテレビは、こうしたイラク社会を人間的な社会に変えていこうと呼びかけている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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