2017年11月10日 1501号

【トランプ来日 戦争屋たちの悪だくみ "朝鮮"利用し政権浮揚狙う 戦争も威嚇も絶対許さない】

 朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に対する挑発を繰り返すトランプ米大統領が来日する。「対話は無用」とその上を行く安倍首相と会談する。支持率低迷の2人。朝鮮をネタに勢力挽回、戦争の危機を煽り軍拡を進める政治姿勢までそっくりだ。国際紛争の解決手段として武力の行使、武力による威嚇を永久に放棄した憲法9条を活かすためにも、戦争屋たちの悪だくみを許してはならない。

日米韓の軍事挑発

 トランプ米大統領の東アジア歴訪スケジュールは、11月5〜7日の日本の後、韓国(7日)、中国(8〜9日)。10〜11日はベトナム、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議、12〜13日はフィリピン、東南アジア諸国連合(ASEAN)創設50周年記念行事の出席と続く。各訪問国で首脳会談が行われる。

 トランプは、朝鮮の核ミサイル対策のためだけに来るわけではないが、日本、韓国の両政府との会談は対朝鮮軍事同盟の強化を演出するものである。中国共産党大会開催時(10/18〜10/24)やこの歴訪中にもミサイル発射の動きがあるとの情報を流し、軍事演習を重ねている。

 10月16〜20日、米韓は40隻の艦船による軍事演習を朝鮮半島の東西両側海域で実施した。23日には、日米韓3か国の軍事担当閣僚がフィリピンで会談。「核・ミサイル開発を加速させる北朝鮮は世界の重大な脅威」として、共同軍事訓練の実施などにより朝鮮に圧力をかけ続けていくことを確認している。翌24、25日には、朝鮮の弾道ミサイル発射探知、追跡態勢の軍事演習を行った。イージス艦、日韓各1隻と米軍2隻の連携訓練だ。

 今、米原子力空母「ロナルド・レーガン」が朝鮮半島近海にいる。さらに米軍は「中東での任務を終えた原子力空母『ニミッツ』がインド洋に入った」と公表。10月6日に西海岸サンディエゴを出港した「セオドア・ルーズベルト」と合わせ、朝鮮に対応する第7艦隊の海域に3隻の原子力空母を配備する。「極めて異例」(米軍高官)という3隻体制での演習には、自衛隊も参加する予定だ。

 一連の軍事演習は、誰が見ても日米韓合同の武力による威嚇に他ならない。


「幼稚園児のけんか」

 一方、朝鮮は10月に固体燃料新型エンジンの燃焼実験を行ったと報道された。米の核脅威に対抗するため、米本土を攻撃できる核ミサイルを完成させるまで開発をやめないと言明する朝鮮。核による報復戦略は、発射位置が特定しにくい潜水艦発射核ミサイル(SLBM)が必須といわれる。朝鮮はすでに、16年にSLBMの発射実験を行い、今回の新型エンジン実験はSLBM用のもの。来春には、大型潜水艦が竣工する。朝鮮の核ミサイル開発は「核抑止力」を信奉するもので、人類破滅の道を突き進む許されない行為だ。朝鮮への軍事圧力は、核開発を正当化する口実を与えているにすぎない。

 だがトランプは、4月にシリア空爆を強行したとき、民主党やメディアからも歓迎された「成功体験」がある。前オバマ政権との違いをアピールしながら支持者をつなぎとめているトランプにとって、朝鮮に対しても戦略的忍耐の名で何もしなかったオバマ≠ニの違いを示す必要を感じている。

 米国内の世論調査(9/18〜9/21、ワシントン・ポスト他調査)では、先制攻撃には67%が反対しているものの、70%が「米国に対する深刻な脅威」と回答し、「より厳しい経済制裁」を科すことに76%が賛成している。トランプは、「力により屈服させる強いアメリカ」こそ自分への支持の理由だと思い込んでいる。

 トランプは金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長を「チビのロケットマン」と口撃し、金正恩も「狂人、老いぼれ」と応じるなど「幼稚園児の口げんか」(ラブロフ・ロシア外相)と揶揄(やゆ)されている。しかし、これが単なるパフォーマンスに終わらない可能性は常に存在する。米朝双方が何かしでかす―たとえ偶発的であろうが、軍事衝突は絶対に起こさせてはならない。

「北朝鮮のおかげ」

 朝鮮が相手にしているのは米政府だ。だが、この米朝の「けんか」に割り込んで当事者になりたがっているのが、軍事緊張を掻き立てる安倍だ。衆院解散を決めて向かった国連総会の場で、トランプの上を行く演説をぶった。「必要なのは、対話ではない。圧力なのです」と繰り返した。朝鮮が挑発に乗ってくれれば、選挙は有利になる。そんな計算があったに違いない。

 麻生副総理が「(衆院選自民大勝は)明らかに北朝鮮のおかげ」(10/26)と発言した。政府、自民党中枢の偽らざる心境だろう。自らの政権維持のために、戦争挑発をくり返す極めて危険な政権が米国にも、日本にも存在しているということだ。

 今年7月、核兵器禁止条約に反対した日本政府は核廃絶への姿勢を疑われている。日本が国連に24年間にわたって出し続けている核兵器廃絶決議は、昨年に比べ「禁止条約にも触れず、内容が後退している」と賛成国が23か国も減った。

 朝鮮の核ミサイル開発を止めるには、全世界の国が核兵器禁止条約を締結し、核兵器廃棄へ国際的監視機関を設置することだ。日本政府はその先頭に立って初めて、日朝国交回復、拉致問題の解決などにも進むことができる。それが「平和を維持…しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたい」(憲法前文)とする平和憲法を活かす道である。



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