2017年11月10日 1501号

【関電 大飯原発2基廃炉へ 顧客流出で採算合わず 追い詰められる原発推進路線】

 関西電力が老朽原発・大飯原発1、2号機の廃炉を検討しており、11月中にも最終判断すると各紙が報じている。この背景には何があるのか。

100万`h級で初

 これまで廃炉が決まっているのは、東電の福島第一原発を除くと5電力会社の5基で、いずれも出力60万`h以下の小型原発だった。大飯原発1、2号機は共に118万`hの大型原発だ。

 事故後に定めた新規制基準では、原発の運転期間は原則40年、審査に通れば1回だけ20年の延長が認められることになっている。大飯1号機は稼働38年、2号機は37年で、運転延長申請期間が1号機は17年12月〜18年3月、2号機は18年9〜12月と迫っている。

 ここに来て廃炉に傾きつつあるのは、安全対策に巨額をつぎ込んでも採算がとれない見通しが強まっているからだ。

かさむ安全対策費

 老朽原発の運転期間を延長するには、規制委が求める安全対策を施す必要がある。 関電は再稼働を決定済みの7基の原発の安全対策で約8300億円が必要になる見込みである上、1、2号機は格納容器が特殊で他の原発以上に費用がかかるとされる。

 1、2号機は事故が起きた場合に、原子炉圧力容器から漏れた蒸気を格納容器の内壁に設置した氷で冷やし、温度と圧力を下げる「アイスコンデンサー式格納容器」という世界でも珍しい型を採用している。この型は通常の原発に比べて格納容器の容積が小さいため、規制委からは「他の原発とは同列に扱えない」との指摘が出ており、関電の岩根社長もこれまでの記者会見で「大飯1、2号機は格納容器が小さく、安全設備を相当設置する必要がある」と述べていた。その費用は4000億円といわれている。

止まらない顧客離れ

 一方で関電は、16年4月にスタートした電力小売り全面自由化のあおりをもろに受け、電気販売で苦戦が続いている。17年4〜9月の販売電力量はピーク時の2010年度から26%減となった。すでに3月、これまで維持してきた年間販売電力量2位を中部電力に奪われ、初めて3位に転落していた。低落に歯止めがかからない。

 これは、節電意識の普及に加え、電力小売りの全面自由化から今年8月までに100万件を超える顧客が流出したことが大きく響いている。最大の流出先は大阪ガスだが、市民団体による「原発の電気はいらない署名」運動などもあり、原発に依存する関電から再生エネルギーに重点を置く新電力への乗り換えの動きが関電離れを加速している。

 巨額の費用をつぎ込んでも、それに見合う電力需要が見込めない現状では、無理に運転延長する方がデメリットが大きいとの判断に傾かざるを得ないのだろう。


狂う政府の電源構成計画

 関電が最終的に廃炉を決断すれば、他の電力会社でも採算を精査して大型原発でも廃炉を選ぶ可能性が高まる。

 福島原発事故前は電力の約3割が原発でまかなわれていた。ところが、現在は数%程度。安倍政権は2030年の原子力比率を20〜22%とする電源構成計画を決めたものの、そのためには30基程度の原発の再稼働が必要で、その実現はますます難しくなっている。かといって原発を新増設することは、さらに難しい。

 9月に就任した原子力規制委員会の更田(ふけた)委員長は、同じ敷地内に複数の原子炉が集中して立地している問題について、「(リスクについての)議論を始めていく必要がある」との考えを明らかにしており、簡単に原発増設が認められる状況にはない。

 経産省が今年度から原発立地自治体を対象とした国の補助金を半径30`圏内の自治体に払う仕組みにこっそり変更していたのも再稼働を推進するためだ。それほど再稼働に対する周辺自治体の懸念が強いことを示している。

 一貫して5割を超える再稼働反対の世論と共に、市民によるさまざまな取り組みは、確実に原発推進勢力を追い詰めている。

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