2017年11月17日 1502号

【アベノミクス「成果」のからくり/基準変更と政府の投機】

 選挙中、安倍首相は、アベノミクスの「成果」自慢をくりかえしさらに加速させると訴えていた。「成果」とは、安倍政権5年間でGDP(国内総生産)が50兆円増えたこと、株価が21年ぶりに高騰していることなどだ。数値を掲げているためもっともらしく聞こえるが、実はごまかしがある。アベノミクス失敗の事実は隠せない。GDPと株式のからくりを見てみよう。

算出方法変え50兆円増

 昨年12月8日に内閣府がGDPの算出方法を変えた。基準とする年を2005年から2011年に変更、国際基準に対応、その他としたのだ。何が変えられたのか。

 改定することによって、国際基準対応では2015年に24・1兆円、その他で7・5兆円、計31・6兆円がかさ上げされた。国際基準対応では「研究・開発の資本化」がもっとも多く、19・2兆円。それまで研究・開発費は経費とされていたが、投資に切り替えられ、GDP値を増やした。

 また、「(戦車や艦艇などの)防衛装備品の資本化」も行われ、「兵器システムは将来にわたって付加価値を生産する」と位置付けられた。それまでGDPにそのままは計上されなかった兵器を増やせばGDPが増えるわけだ。戦争国家になればなるほどGDPが増えることとなる。

 自民党は選挙公約でGDP50兆円増を強調し、あたかも安倍政権下で経済が順調のようにいう。だが、50兆円増にGDP算出方法の変更が大きく寄与していることは疑いない。自民党はその増加の内訳を明らかにしていない。

 では、なぜ算出方法が変更されたのか。

 2年前の9月、安倍首相はアベノミクス「新三本の矢」を唱えた。その第一の矢が「希望を生み出す強い経済」であり、筆頭に「2020年を目途に名目GDP600兆円達成」を挙げた。

 第二ステージとはいうものの、第一ステージが失敗したために受けがいい新しい項目で国民の目を欺こうとした。名目GDP600兆円達成がその重点とされたが、それまでの経済成長率から予測すると、ほぼ不可能な数字である。そこで考え出されたのがGDP算出方法の変更であった。安倍政権は、目的達成のためには手段を選ばないのだ。

官製相場で株価高騰

 日経平均株価が21年ぶりに2万1000円を超えたことについて安倍首相は、「与党が安定しているから」と自慢げに語った。9月第4週から10月第3週まで16日連続で株価が上昇した。今後も上昇するとの予測が流れ、週刊誌でも株高になるから投資せよ≠ニあおっている。

 この間の株価高騰は直接的には海外の投資家が日本株を連続して買っていることに起因する。その裏には安倍政権の株価つりあげ政策がある。公的資金を大量に株式市場に投入し、官製相場と称される状態をつくってきたからだ。

 日本銀行は株価に連動するETF(上場投資信託)を年6兆円のペースで買っており、10月時点での時価は21兆円にのぼる。さらに、公的年金基金も国内株による運用比率を2倍以上増やして39兆円を保有し、両者で合計60兆円となっている。今や、東証1部上場企業の4社に1社の筆頭株主に日銀と年金基金がなるという状態にある。


いずれは大暴落

 こうなると、問題が露呈する。業績など経営状況を判断しながら企業を選別する市場機能が低下し、日銀や公的年金基金が相場をつくってしまいかねないからだ。

 日銀が株を買う時は株価が下がってきたときであり、それにはこれ以上は下がらないだろう≠ニの安心感を投資家に与える働きがある。実際にこうした下支えをしてきた。この仕組みを知った海外の投資家が日本の株式に目を向けるのは当然だ。これに米国の株高や円安、さらには世界経済の堅調などが作用した。

 株価と円レートは毎日報じられ、その推移は国民の関心を買う。そのため安倍政権は公的資金を大量に投入して株高と円安を演出してきた。今は順調に見えるが、そこに深刻な問題が横たわっていることを忘れてはならない。永遠に上がり続ける株などありえず、バブル崩壊やリーマンショックのように「想定を超えた」大暴落は必ずやってくる。

 株高で儲かっているのは大企業と富裕層だけであり、格差がますます拡がっていく。マネーゲームは止めなければならない。アベノミクス失敗を隠すために政府がその先頭を切るなど許されない。
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