2017年11月17日 1502号

【沖縄・南西諸島 あきらめ誘い票かすめとる/民意捻じ曲げる市長に地元が反発/辺野古を狙う日本版海兵隊】

宮古島市議選と民意

 衆院選同日の10月22日、宮古島市議会議員選挙の投開票が行われた。前回選挙より定数が2削減され、24議席に、下地敏彦保守市政の与党18人、ミサイル配備反対の野党12人、中立3人の計33人が立候補。結果は、与党16人、野党5人、中立3人が当選し、市長派が勝利した。「命の水を守ろう、ミサイル基地のない平和な島を!」を訴え再選をめざした石嶺かおり候補は、26位で惜敗と残念な結果に終わった。

 選挙結果だけを見ると、ミサイル配備賛成の市長派が多数を獲得したので民意はミサイル容認かといえば、それは違う。陸上自衛隊ミサイル基地建設予定の千代田部落も、隣の航空自衛隊基地のある野原(のばる)部落も、部落会として反対決議を上げている。地元住民は、ミサイル基地反対のノボリや横断幕を市内各地に掲げ、これ以上の基地負担反対という強い意志を示している。

 しかし、基地反対派が議会内少数という結果になったのには、安倍政権が辺野古や高江で繰り返しているやり方と同じ「諦めさせる」手法を宮古島でも駆使したことが関係している。市議選告示10月15日の翌16日、防衛省は「宮古島の陸自建設工事を来年1月着工」とリーク情報を流し、17日には「ミサイル配備予定地の千代田カントリーゴルフクラブの土地契約を締結」のニュースを流した。

 つまり、市議選で「ミサイル基地反対」と議員候補が訴えても、「もう基地建設は進む」「反対しても遅い」から「反対派に入れても仕方がない」「諦めるしかない」という情報操作で島民世論を誘導し、選挙結果にも影響させたのだ。

衆院選沖縄は辺野古反対

 こうした効果は、衆院選沖縄4区でオール沖縄から無所属で立候補した仲里利信候補にも影響した。仲里さんも明確に宮古島の陸自ミサイル基地建設反対を訴えていたからだ。仲里さんは落選したが、大きな要因は宮古島市での自民党獲得票との差だった。

 下地宮古島市長と同じ保守の中山義隆石垣市長などは、衆院選で自民党と幸福実現党の票数を合計すると仲里候補よりも多いという理由で、石垣市民の民意は自衛隊配備賛成だと語る(10/29)。南西諸島の自衛隊配備は、自民党や右翼政治勢力が事実を歪曲し強行しようとしている。これに対し、石垣市でのミサイル配備予定地の於茂登(おもと)、開南、川原、嵩田(たけだ)の4公民館長は中山市長の発言に反対する共同声明を翌日に発表した。

 安倍政権は、4区で自民が勝ったことでオール沖縄離れが進んでいるかのように宣伝するが、そうではない。沖縄の衆院選結果は、自民党が小選挙区第2区と3区で落選し、比例復活も出来なかったため辺野古賛成の議員2人が減った―これが現実だ。

 沖縄防衛局は、辺野古新基地建設の埋め立て工事を本年度内に発注する公告をホームページにアップした(10/28)。来年2月の名護市長選、秋の県知事選をにらんで、またしても工事が進んでいるかのように描き出し、県民を諦めさせる算段を画策している。

辺野古に活断層

 辺野古の新基地工事海域に活断層が存在する可能性があることが10月24日までにわかった。防衛庁(当時)が2000年に作成した「代替施設建設協議会」資料中の「海底断面図」で50メートル近く沈下した落ち込みがある場所が記載されている。今年2〜4月にかけて大型特殊船ポセイドンで海底地質調査を繰り返した海域と重なっていた。

 終了したばかりのボーリング調査を再開するなど、工事の進捗に不可解なことが続いていた。直下型地震で滑走路などの施設が破壊されるだけでなく、弾薬や燃料など基地内の有害物質が海や近隣集落に流れ、火災や汚染など二次被害が起きる可能性も出てきた。沖縄防衛局も活断層について「安全」と断言しなかったことから、確証を持てずにいることは明らかだ。国が主張する辺野古新基地の「適地性」も崩れたことになる。

 政府は辺野古新基地建設計画を断念するしかない。

南西諸島配備反対の声を

 日本版海兵隊「水陸機動団」が2020年代前半に沖縄の米軍キャンプ・ハンセンに駐屯することが政府関係者情報として報じられた。キャンプ・ハンセンとキャンプ・シュワブは基地内でつながっている。中谷元(げん)・元防衛相が「辺野古新基地(キャンプ・シュワブ)は将来自衛隊の基地になる」とたびたび語っていたことが現実になってきた。

 来年3月に発足する水陸機動団は2100人。その後、沖縄には新たに600人が配備される予定だ。島嶼(とうしょ)防衛の名で南西諸島にMV22オスプレイ、水陸両用車AAV7などを配備し、陸上自衛隊を米海兵隊同様の殴り込み部隊としていくことがいよいよ鮮明になった。南西諸島への自衛隊配備反対の声をさらに広げなければならない。(N)



ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS