2017年11月17日 1502号

【ショボ目ときどきギョロ目(4)民主主義崩壊のツケが来た】

 季節外れの歌の文句が口を衝(つ)いて出た。

 赤い鼻緒がぷつりと切れた〜 さくら さくら 花吹雪〜

 そう。忘れもしない。「安倍首相、明日衆院解散表明」のテロップが流れていた9月24日夜9時過ぎのこと。知人からいただいた梨の皮を剥(む)こうと台所で包丁を握った途端、本当に、「ぷつり」と音がして切れた。右手中指の腱が。以来、中指は、だらしなく、ぷらんぷらん。「おい、どうした」とばかりに、隣の薬指が張り切って跳ね上がり、いっそうバランスが悪い。

 兆候はあった。数カ月前から何となく右腕に軽い痺(しび)れがあり、脳梗塞で入院したとき、「これも?」と恐る恐る担当医に訊いた。「詰まったのは右。だから右腕は関係ない」と一言。そうか。腱鞘炎か。そういえば、この指は酷使してきた。大した原稿も書かないのに、筆圧だけはやたらにかける。鉛筆を握らなくなって十何年も経つのに、まだペンダコの跡が残っているからなぁ。

 後期高齢者を目前にして、頭から眼、耳、歯、内臓、お尻、膝、足指まで、次々とぼろが出ている。思えば、肉体の現場は、みんな「いい加減にしてくれ」と言っていたのだ。それに耳を傾ける謙虚さを忘れていたのだと、私の場合、ウソ偽りなく思う。

 「それって、体内民主主義崩壊のツケじゃない? 70年も? 安倍一族の比じゃないじゃん」

 鬼娘に隠れて、ベランダで夜の一服。盟友原発難猫ロックが、いいことを言う。

 「まぁ。な。でもさ、オレは聞く耳は持たなかったけど、騙しちゃいないぜ」と苦しい言い訳だ。

 あれから1カ月余。

 電話の脇に縦31a、横7・5aのステッカーが貼ってあるのに気がついた。「見破れ!!オレオレ 息子は詐欺!? 旭警察署」。裏にカミさんの字でメモ。

 旭区 1687件。799件プラス。神奈川県32億5000万円。1日の被害5・7件 1000万円…お巡りさんが丁寧に説明していったらしい。

 それもまぁ大切だけど、きゃつらによる「国難詐欺」の被害はどれだけか、ねぇ。

 いつまで待っても来ぬ人と死んだ人とは同じこと〜

 耳の奥で、坂本冬美の声が聞こえる。今夜はショボ目だ。

(南相馬市の原発難民 村田弘<ひろむ>)


これって、オレオレ詐欺じゃないの?
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS