2017年12月01日 1504号

【みるよむ(462)2017年11月18日配信 イラク平和テレビ局in Japan クルディスタン住民投票についての市民の意見】

 2017年9月25日、イラク北部クルディスタンでイラクからの独立を問う住民投票が行われ、独立賛成が圧倒的多数を占めた。サナテレビはこの問題についてバグダッドでインタビューした。市民は賛成、反対の意見を率直に述べた。

 クルド民族はイラク、イラン、トルコ、シリアの国境をまたぐ地域に住み、人口3千万人に及ぶ。国境線は20世紀に欧米帝国主義国の都合で引かれ、各国政府から抑圧されてきた。クルド民族が自ら独立国家を建設する権利は誰も否定できない。しかし、イラク政府は住民投票に強硬に反対し、軍隊を送って独立を阻止しようとしている。イラン、トルコ、シリア、米国も同様だ。イラクの石油生産の3分の1を占めるクルディスタンで、グローバル資本の利権を守るためだ。

 インタビューで最初に登場する市民は「私たちとクルド民族は兄弟であり、シーア派やスンニ派、クルド民族、アラブ民族、キリスト教徒の間で分け隔てしないことが大事」と語る。イラクは多民族、多宗教の国であり、普通の市民感覚と言って良いだろう。

 この男性は「クルド民族が独立の住民投票を要求するのは正しい」「私たち自身の問題で他の国の支援など必要ない。クルディスタンが独立して成功することを願う」と断言する。

 一方、ある市民はイラクをクルド民族とシーア派の地域、スンニ派の地域の3つに分裂させようとする勢力があることを心配し、独立に反対する。別の市民も、民族対立があおられたり、石油資源の豊富なキルクークなどはイラク側が手放さないだろうと予想する。

 実際、映像の撮影後、イラク政府軍が出兵して一部でクルド自治政府部隊ペシュメルガとの戦闘が起きた。事態はまだ流動的だ。市民らは、グローバル資本とイラクの宗派主義や民族主義勢力、中東の周辺諸国の主導権争いによる民衆の被害に警告を発している。

 住民投票を実施したバルザーニ議長とクルド自治政府自身汚職にまみれ、労働者の権利を抑圧してきた。

 クルディスタン労働者共産党とイラク労働者共産党は、住民投票を支持し、石油利権確保を狙うイラク政府や米国、イラン、トルコの介入にも、クルド自治政府の強権支配にも反対している。民衆の自決権を守り、グローバル資本の介入に反対する声を強めたい。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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