2017年12月01日 1504号

【疑惑まみれの認可強行/加計学園問題の幕引きを許すな/こんな獣医学部は必要ない】

 学校法人「加計(かけ)学園」(加計孝太郎理事長)が愛媛県今治(いまばり)市に新設を計画している岡山理科大学獣医学部について、文部科学省は11月14日、来年4月の開学を正式に認可した。当初、10月の予定だった認可を総選挙後に先送りし、勝った途端「お友達」優遇、行政ねじ曲げを公然と再開した安倍政権。疑惑は何ひとつ解明されていない。

認可条件に該当せず

 もう一度、政府自らが定めた獣医学部認可の条件を確認しておこう。政府が2015年6月に閣議決定した成長戦略「日本再興戦略改訂2015」では、(1)既存の獣医師養成でない(2)ライフサイエンス(生命科学)などの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要がある(3)既存の大学・学部では対応が困難(4)獣医師の需要の動向を考慮する――が条件だ。

 愛媛県今治市の申請書は、(1)〜(3)に関し「SARS(重症急性呼吸器症候群)、鳥や豚インフルエンザといった新しい人獣共通感染症への対応、水産県である愛媛県の養殖漁業に寄与する獣医師の育成など」が必要としている。だがこれらの人獣共通伝染病は、感染症予防法で医師・獣医師が一体となって対策に当たるよう定められており、既存の医学部・獣医学部も含めた対応になる。養殖漁業の部分に至っては「日本では水産学部があるため、この分野への獣医師の志望者は少ない」と自らその必要がないことを認めている。

 今治市の申請書は、獣医学部を持つ大学の所在地が偏在しており、その解消のため獣医学部のない四国に獣医学部が必要と強調している。しかし、獣医学部の配置に地域的な偏りがあるのは畜産の盛んな地域とそうでない地域があるからだ。畜産が盛んな北海道・東北・九州や、人口密集地でペットの飼育頭数の多い首都圏に偏っているのは不思議ではない。

 今治市はまた、四国で活動する獣医師が全国の2・4%しかいないとのデータまで持ち出し獣医学部設置の根拠としている。だが、畜産統計調査(農林水産省、2017年)によれば全国で家畜として飼われている乳用牛頭数のうち四国は1・4%。肉用牛頭数は2・3%、豚も3・1%だ。獣医師の配置はほぼ適正で、四国に新たな獣医学部が必要とは考えられない。

 加計学園獣医学部設置は構造改革特区制度に基づくものとされる。本来、構造改革特区諮問会議でこうした点をきちんと検討すべきだが、これらが検討された形跡はなく、正確な議事録もない。「自民党機関紙」産経は、加戸守行・愛媛県元知事の発言をことさら取り上げ、獣医学部の必要性をあおるが、加戸は日本会議愛媛県支部の役員。知事時代には「新しい歴史教科書をつくる会」の歴史歪曲教科書を教育長に働きかけ採択させた右翼で、安倍の「お友達」だ。そんな連中の言うことが信じられるわけがない。

逃げ回る2人

 認可翌日の11月15日、衆院文部科学委員会で行われた集中審議。与党はこれまで野党に8割が配分されていた質問時間の割合を変え与党1、野党1にしたいと提案した。最終的には1対2となったが、野党の時間はわずか160分のみ。加計学園問題の追及を恐れたのは明らかだ。

 17日にようやく行った所信表明演説でも、安倍は森友・加計学園問題には一言も触れなかった。総選挙直後にも繰り返していた「謙虚」「丁寧に説明」はどこに行ったのか。ひたすらその場しのぎで、選挙で勝てば何をしても許されるとの驕(おご)りはまったく変わっていない。

 加計理事長にいたっては、公の場での説明をいっさいしないまま沈黙を続ける。市民がこれだけ疑問を持っているのだ。当初計画では96億円もの巨額の公費投入を受ける当事者として公式にきちんと説明する義務がある。8億円値引き、数千万円の詐欺容疑の籠池どころの話ではない。

教員予定者も辞退

 「認可」によって加計学園獣医学部は来年春開校に向けて準備が進む。だが準備も順調なのか。

 加計学園は「韓国で獣医師になれる」と宣伝して留学生を募集している。募集定員140名のうち20人と全体の7分の1だ。そもそも四国で獣医師が足りないから獣医学部を作るのではなかったのか。

 獣医学部長には「人獣共通感染症が専門」の吉川泰弘・千葉科学大教授が就任するが、千葉科学大は加計学園が設置した大学で「身内」からの登用だ。当初、教員に就任予定だった帯広畜産大学教授は辞退した。

 総選挙勝利を背景にお友達優遇、行政ねじ曲げで安倍が強行認可した加計学園。早くも足下が崩れ始めた。さらなる徹底追及が必要だ。(C)



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