2017年12月01日 1504号

【原発避難者に住宅明け渡し迫る裁判取り下げよ/被害者を訴えるとは何ごとだ】

 原発事故で福島から山形に避難した区域外避難8世帯が住宅の明け渡しと家賃の支払いを請求されている裁判の第1回口頭弁論が11月21日、山形地裁で行われる。

 「加害者が被害者を訴えるとは何ごとか」。11月16日、参院議員会館で抗議の緊急市民集会が開かれ、山形の避難当事者、弁護団、国会議員や避難者支援団体から約200人が参加した。

 集会に先立つ記者会見で、海渡雄一弁護士は「政府自身が区域外避難の合理性を認め、子ども・被災者支援法の対象地域から避難しているのに住宅から追い出すのは違法だ。帰還政策の当否を問う裁判になる。国連人権理事会では原発事故後の避難者への対応が人権侵害に当たらないか、日本政府に勧告する方向だ」と裁判闘争の意義を指摘した。

「生活はぎりぎり」

 当事者の1人、武田徹さんは「山形県の調査では約7割の避難者が生活苦を訴え、家族の健康を心配している。誰ひとりとして好き好んで避難した人はいない。子どもさんがいるなど個別の事情を一切考慮せず、一律に住宅提供を打ち切ったのは大問題」と怒る。母親2人も訴えた。「息子はしょっちゅう鼻血が出、私はストレスで1か月入院。原発事故から1年後に避難した。福島の自宅は(土壌汚染が1キロ当たり)4767ベクレル。帰るつもりはない。ぎりぎりの生活で家賃月4万円は支払えない」「2人の子は甲状腺検査でA2判定。子どもの被ばくを避けようと事故の年の12月に避難した。母の助けを借りながら私はフルで働いていたが、今はパート。夫は持病で月1万円の医療費、私も入院しその後も通院継続、子どもの塾のお金、と月23万円の収入では蓄えもできない」

 集会には、共産党・立憲民主党・民進党などの衆参国会議員10人が出席し、全員が発言した。福田健治弁護士は「支援法に基づき、対象地域の被害者への住宅の確保が義務付けられている。裁判で追い出そうとするのは理不尽」と批判。主催した避難の協同センターの瀬戸大作事務局長は、相談事例から「やむを得ず民間住宅に引っ越した人も半年経って家賃支払いが困難になっている」と実情を紹介。「行政は実態を把握し、公的住宅の保障、経済支援を」と訴えた。

緊急署名を提起

 原発避難者住宅裁判を準備する会世話人代表の熊本美弥子さんは「東京の私たちも明日は我が身と受けとめ連帯する」と決意を語り、「住宅の強制立ち退きに反対する緊急署名」を提起した。12月7日に第1次集約し、厚生労働大臣・復興大臣・福島県知事らに提出される。

 ひだんれん(原発事故被害者団体連絡会)からは神奈川に避難している村田弘さん、さようなら原発1000万人アクション市民の会からは鎌田慧さんが連帯あいさつ。鎌田さんは「原発をなくす運動は被害者を置き去りにしてきたのではないかと反省している。居住権は最も基本的な人権で、許しがたい攻撃だ。人と命と暮らしを守っていく」と決意を述べた。

 最後に武田さんから「巨象がアリを踏み潰すような行為。住宅問題が全国に波及していくなら、たとえ被告にされても名誉だ。今日は様々な意見が聞けてうれしかった」とお礼の言葉があった。



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