2017年12月08日 1505号

【みる…よむ…サナテレビ(463)/2017年11月25日配信 イラク平和テレビ局in Japan/まともな生活ができる社会を ―イラク市民の声―】

 膨大な失業者と貧困者を抱えるイラクで、失業者に給付金を出す社会公正法案が議会に提出された。しかし国会議員のほとんどはこの法案に反対している。2017年9月、サナテレビはこの問題についてイラク市民にインタビューした。

 法律専門家のモハメド・アリ・ナシアーフさんは、イラク憲法の基本原則は失業者に雇用の機会を与えていると指摘する。そして「良好で健康な生活を送れる最低限の給付金を国民に提供しなければならない」と主張する。

 失業率が極めて高いイラクでは、こうした保障は絶対に必要だ。ナシアーフさんは、国会議員の大多数が社会公正法案に反対していることに対して「貧しいイラク国民にもっと目を向けろ」と憤る。

 法案には弱点もある。政府は、莫大な石油収入を財源にすることができるにもかかわらず、実施する費用を増税によってまかなおうとしている。この点で法案に反対する市民もいる。市民は「社会保障の財源さえ国民に一方的に負担させ、自らは汚職にまみれている。国会議員たちは泥棒の集団だ」と非難する。

 別の男性は、自らの体験から政府は以前、学生への奨学金をある程度保障したことを語る。「工業専門学校生の時に年間90万ディナール(約8万8000円)を、バグダッド大学に入学すると年間10万ディナール(約9700円)を受け取った。ところが、大学入学後3年目にすべて打ち切られた」

 最後に登場する市民は「議会の金持ちの連中は、飢えている人たちや路上で暮らす貧しい人たちのことなんか考えていない」と批判する。法案に賛成する議員は20%に過ぎないという。市民は「イラクを正しく統治する政府にしよう」と呼びかけている。

 日本でも、安倍政権は軍事費を大幅に増やし、社会保障を切り捨て、学生へのまともな奨学金制度を提供していない。社会保障切り捨てに反対し平和憲法を守るという市民の立場に立つ国会議員の数が非常に少ないことも共通する。

 イラク政府は石油収入による莫大な国家予算を持つが、グローバル資本の利益のためにしか使っていない。町には大勢の失業者、貧困者が放置されている。サナテレビは、格差拡大を進める政府を市民の闘いで変えていこうと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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