2017年12月15日 1506号

【安倍政権の大軍拡/「南西諸島防衛」は中国封じ込め/カネめあての戦争政策】

 安倍政権の下、軍事費は天井知らずの右肩上がりを続け、2018年度予算で6年連続増、過去最高額の5兆2千億円が見込まれる。朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の核・ミサイル開発「対策」と並んで巨額の費用を投じるのは離島防衛を口実とした自衛隊配備の「南西シフト」だ。だがこれは、住民の生命・財産を守るためのものではない。狙いは中国封じ込めにある。

 東アジアの地図を上下逆にし中国視点で見れば分かりやすい(図1)。


海上輸送路巡り軍事的緊張

 中国にとって台湾から琉球弧、日本列島、千島列島に至る線は海洋進出の障壁だ。点在する島々の間で海上封鎖や臨検が行われると中国艦船は太平洋との間を自由に往来できない。

 海上輸送路確保のためとして、中国はこれまで南シナ海の南沙諸島などの島々を自国領であると主張し、中国人民軍は「第一列島線」として南シナ海を囲む防衛線を設定。近年、岩礁を埋め立て軍事基地建設を進めてきた。尖閣諸島領有の主張も、周辺の資源とともに海路確保の目的もある。中国もまた、日本が「シーレーン」とする南シナ海からインド洋を経て中東・アフリカへと向かうからだ。

 一方、安倍は現実に自衛隊南西シフトで奄美大島から沖縄島・先島諸島に至るレーダー網や地対艦ミサイルなどを配備する。しかも、日本海では日常茶飯事のように日米・米韓軍事演習が展開される。中国にとって軍事的脅威だ。

 世界第2位の経済大国・中国は、輸出額世界1位(2016年・国連貿易開発会議)で、貿易を支える海上物流も世界1位で2億394TEU(2014年現在。1TEUは20フィートコンテナ1個分)。2位の米国4649万TEUの4倍にも上る。世界主要港コンテナ取扱量上位10港のうち7港が中国だ(表)。



 また、急成長を支える原油消費量は世界2位の1197万バレルだが、国内生産ではその3分の1しかカバーできず、輸入先は多い順に中東(52%)、アフリカ(22%)、ロシア(13%)、南米(11%)となっている。対アフリカ輸出額は中国が90億ドルで世界1位。2位フランス30億ドルの3倍にも上る。

 南シナ海経由の輸送航路確保が軍事的海洋進出の背景だ。

インド洋でも合同演習

 中東、アフリカ、欧州を目指し南シナ海を抜けるとインド洋が広がる。中国は香港からスーダンに至る海路で、ビルマ、バングラデシュ、スリランカ、パキスタンなどと友好関係を結び多額の投資で港湾を整備(真珠の首飾り戦略)、スリランカと軍事訓練を行い原潜を巡回させるようになった。「首飾り」は中国と欧州までをむすぶ陸のシルクロードと海のシルクロードを構築する「一帯一路構想」の海上ルートにあたる(図2)。



 中国の「首飾り」で包囲されたインドは、これに対抗して周辺国に投資。日米とともに「首飾り」の外を取り巻く「ダイヤのネックレス構想」で中国封じ込めに動いた。

 安倍も日本、ハワイ、オーストラリア、インドを結び中国を封じ込める「民主的安保ダイヤモンド構想」をぶち上げ、軍事的包囲網に力を入れた。オーストラリアへ潜水艦を売ろうとしたのも、日印原子力協定を結んだのも中国封じ込めと密接に関わる。軍事的にも自衛隊はインド洋で英国、インド、米国と合同軍事演習を行い中国封じ込めを画策している。

グローバル資本の権益争い

 米国と日本が強い影響力を持つ世界銀行やアジア開発銀行に対抗し、豊富な資金を背景に中国はアジア開発投資銀行設立を呼びかけ、加入国はアジア、アフリカ、南米、欧州、カナダ、オーストラリア、ロシアなどの70か国に及ぶ。だが日米は加入せず置き去りだ。11月のAPEC(アジア太平洋経済協力)では、日米より中国の演説が目立った。アフリカ大陸での影響力も中国に大きく水をあけられている。

 安倍は中国の海洋進出に対し、もっともらしく「法の支配」を持ち出す。だが本音は、日米を中心とした軍事同盟を軸に中国の影響力拡大を抑えることにある。「自衛隊南西シフト」もその一環であり、住民の意思を無視し、与那国島、石垣島、宮古島に異常なほど性急に自衛隊配備を強行してミサイル基地建設を進めようしている。

 武力を背景に覇権を求める姿勢に本質的に違いはない。軍事を背景にしたグローバル資本間の権益争いだ。安倍軍拡はカネ儲けのために、民衆を戦争の危機にさらしている。
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS