2017年12月15日 1506号

【みるよむ(464)2017年12月2日配信 イラク平和テレビ局in Japan 弁護士の権利を守れ】

 イラクでは、政府が無制限に弁護士の人数を増やしているために弁護士としての仕事に就けない人が増えている。弁護士養成でも問題が続出している。2017年9月、サナテレビはこの問題について弁護士や市民の意見を聞いた。

 汚職まみれのアバディ政権はIS(「イスラム国」)への攻撃を口実に人権侵害を繰り返している。その影響は、市民の人権を守るべき弁護士自身の人権にも及んでいる。

 インタビューに最初に登場するのはイラク弁護士協会会長だ。法曹界を代表する人物が「弁護士は社会の他の職業の人たちと同じ苦しみを味わっている」と言うほど、事態は深刻だ。

 イラクでは、ロースクール(法科大学院)の学生数を制限せず、必要な取得単位も厳しくなく、卒業者の数が急増している。そのために弁護士が余ってしまった。また、政府当局は、違法ブローカーや代理人がかかわる不動産登録関係の訴訟を弁護士が取り扱えないようにしている。弁護士の仕事が奪われているのだ。さらに、弁護士が退職して高齢者年金の申請に行っても妨害されるという事態まで起こっている。

 日本でも政府の誤った政策による弁護士過剰問題があるが、その比ではない。

 女性の弁護士も「弁護士の人数がとても多い」と指摘する。そしてこれ以上弁護士の数が増えないように努力していることも伝える。とはいえ、様々な問題に対する行政当局や国会議員の対応は非常に遅く、弁護士協会の会長が直接談判しなければならない状況だ。

市民の人権が守れない

 ある市民活動家は、弁護士協会に対しても「新たにロースクールを卒業した若い弁護士の面倒を見る責任を十分には果たしていない」と批判する。なにしろ「若い弁護士にはアラビア語を間違えずに書くことのできない人がとても多い」。裁判の訴状などまともに作れないだろう。その上、「汚職の多い警察署に行くのを恐れる弁護士がとても多い。ワイロを払わなければならないという問題に巻き込まれるからだ」と言う。これでは市民の人権は守れない。

 サナテレビは、人権を守るべき弁護士自身が人権を保障されていない事実を示し、弁護士の権利を守り、共に市民の人権を守ろうと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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