2017年12月15日 1506号

【展望なき「汚染土処理」 住民に帰還を迫る政府 被ばくを強いる政策許さない】

 福島第1原発事故による除染で出た福島県内の汚染土を保管する中間貯蔵施設(大熊町)の本格稼働が始まった。

東京ドーム18杯分

 今回本格稼働するのは、「受け入れ・分別施設」と分別後の汚染土を保管する「土壌貯蔵施設」。

 除染によって生じた汚染土が、県内各地の仮置き場から保管用の大型土のう袋(フレコンバッグ)に入った状態で中間貯蔵施設に搬入される。受け入れ・分別施設で草木などの廃棄物を取り除いた土は土壌貯蔵施設で保管し、草木ごみは仮設焼却施設で焼却し容積を減少させる。

 中間貯蔵施設に保管される汚染土は最大で東京ドーム約18杯分(2200万立方b)といわれる。だが、大熊町の貯蔵施設の容量は5万立方bしかなく、汚染土のわずか0・02%しか貯蔵できない。このため環境省は、双葉町・大熊町に追加建設を進め、2020年までに500万〜1250万立方bの汚染土を搬入する計画だが、それでも半分が処理されるにすぎない。

 一方で中間貯蔵汚染土は2045年までに福島県外で最終処分とされている。しかし、汚染土を受け入れる自治体などなく、最終処分場の候補地は決まっていない。

帰還場所に焼却施設

 草木ごみの焼却も問題だらけだ。本来、放射性廃棄物を「安全に再利用できる基準」(環境省説明)とされるのは100ベクレル/sだ。だが政府は事故後、除染特措法で、「当分の間」8千ベクレル/sを超える「指定廃棄物」以外は普通のごみと一緒に燃やすとしてしまった。

 燃やしたあとの焼却灰が8千ベクレル以下なら一般廃棄物最終処分場へ運び埋め立てる、8千〜10万立方bのものは既存の管理型廃棄物処理場へ運び埋め立て処分する、10万立方bを超えるものは中間貯蔵施設へ運び保管する、ことになった。

 そして、仮設焼却炉は自治体ごとに建設し、燃やす草木ごみがなくなれば解体することとされた。建設も解体も公共事業だ。この方針に伴って被災地では仮設焼却炉の建設ラッシュとなった。

 建設は日立造船、JFEエンジニアリング、新日鉄住金エンジニアリング、鹿島、西松、安藤ハザマなど大手企業・ゼネコンが受注している。除染を理由に大手企業・ゼネコンに儲け口を作っているとしか思えない運用だ。

 安倍内閣は避難指示を次々に解除し住民の帰還を促しているが、その一方で住民が帰還する場所に仮設焼却炉を建設し、放射能を含んだ煤煙を撒き散らしている。住民の被ばくを避けるのとは正反対の政策がとられている。

汚染土は建設資材で拡散

 被ばくを強いられるのは福島県民だけではない。汚染土を公共事業で再生利用するという名目に、汚染を全国に拡散する計画が進んでいる。

 環境省は2016年6月、「再生資材化した除去土壌の安全利用に係る基本的考え方」を発表。8千ベクレル/s以下の汚染土を公共事業で盛り土などに利用する方針を明らかにした。これは、現行法の放射性廃棄物の再利用基準(先述)の80倍にあたり、5千ベクレル以上あれば剥ぎ取るという農地の除染基準とも矛盾する。

 環境省は、汚染土の上に汚染されていない土砂やアスファルト、コンクリートを10a〜1bかぶせるので、周辺住民や施設利用者の追加的な被ばく線量は小さいと主張する。だが自然災害(道路陥没など)はもちろん、埋設箇所の情報公開がなければ補修工事に伴って汚染土が地表に出てくる危険性がある。

 環境省によれば、8千ベクレル/s以下の汚染土の量は1006万立方bと推計され、全体の約46%にあたる。全汚染土の半分を防潮堤や道路、公園などの盛り土・建設資材として全国に拡散させて処分してしまおうというのだ。

  *   *   *

 放射性物質を閉じ込めるのではなく拡散させる危険な計画は、原発事故の被害を小さく見せるために、できるだけ住民を避難させない政府の政策(そのために汚染土壌の除染をする必要があった)が根本にある。住民の被ばくリスクを避けることよりも、原発推進政策の維持、東電の救済や国家支出の抑制が優先されているのだ。

 民意を結集して、この被ばく強要政策を根本的に転換させなければならない。

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