2017年12月22日 1507号

【東海第2原発運転延長申請/安全よりも日本原電延命/原子力ムラのデタラメ策動】

 東日本大震災と福島第1原発の事故以来、停止している東海第2原発(茨城県東海村)について、日本原子力発電(原電)は、設置から40年経過後も20年間運転を延長するための申請を行う方針を公表した。この申請の裏には、破たん企業・原電の延命を図る原子力ムラの動きがある。

原発専門会社の破たん

 日本の「原子力発祥の地」東海村で1957年に設立された原電は、原発事業者として長い歴史を持つ。東海第2のほか敦賀原発(福井県敦賀市)も運営するが、これも福島事故後は停止したままだ。

 東京電力など他の一般電力会社と違うのは、原発専門会社である点だ。火力、水力など他の発電方法もある一般の電力会社は、原発再稼働ができなくても直ちに会社の経営が揺らぐことはない。だが原発専門会社であり他の発電方法を持たない原電は、原発再稼働ができなければ直ちに経営破たんの危機に陥る。

 福島原発事故後に定められた新規制基準に基づき、2015年、原電が原子力規制委員会に再稼働に向けた審査を申請した敦賀原発2号機。規制委の専門家チームが、直下に活断層が走っていることを確認したのは2012年12月。13年5月にも2号機直下の「D―1」断層が活断層であり、2〜300bの深さにある「浦底断層」とともに動く可能性があるとの調査結果がとりまとめられた。

 原電は調査結果に反発。この断層が活断層でないと反論資料を提出したが、規制委の結論は変わらず、2015年3月の規制委の評価書にもそのまま盛り込まれた。

 新規制基準は、活断層のない地盤に原発を設置しなければならないと明確に定める。敦賀原発の再稼働は絶望的だ。

 東海第2原発も、再稼働への同意権を持つ地元・東海村の村上達也村長(当時)が同意を拒否。再稼働申請できない状態が続いてきた。1978年11月に運転開始した東海第2は、来年11月に運転40年を迎える。ここまでに再稼働審査に合格しなければ、新規制基準では自動的に廃炉が決まる。原発専門会社の原電がすべての原発を失えば経営破たんは決定的となる。原子力ムラの焦りが新規制基準を骨抜きにする運転延長申請へと原電を突き動かしている。


運命を分けたものは

 東日本大震災で、高さ5・4bの津波に襲われた東海第2原発ではすべての外部電源が失われた。津波を免れた非常用ディーゼル発電装置が起動、原子炉の冷却を続けることができたため、辛うじて東海第2は福島第1と同じ破局には至らなかった。非常用電源装置を津波から守るために防潮堤を6・1bの高さにかさ上げする工事が完了したのは、震災2日前の2011年3月9日。かさ上げ前の防潮堤の高さは4・9bだった。

 「津波があと70センチ高かったら、あるいは来るのがあと2日早かったら、東海第2も終わっていた」。2012年9月、日本外国特派員協会での講演で村上村長はこう語っている。それ以来「日本には原発を動かす資格がない」と確信した村長は再稼働への同意を拒否し続けた。

 原電が再稼働を申請した東海第2は、福島第1と同じ沸騰水型だ。同型の原発の再稼働は柏崎刈羽でも狙われている。彼らが行わなければならないのは福島事故の検証であり、再稼働申請ではない。

反省なきムラへの警鐘

 「原発立地地域では全産業が原発依存になり努力しなくなる。衣料品店は原発作業員用のものを仕入れて売る。旅館も原発作業員向けの雑魚寝で風呂も共同。個室化などを提案しても、作業員が来るからいいと言ってやらない」。村上前村長は憤る。原発という「毒」をいったん受け入れると地域経済全体が腐敗し疲弊する。当事者の証言は重い。

 東海第2、敦賀が停止し発電量がゼロにもかかわらず、原電の2017年3月期決算で売上高は1099億円に上る。電力5社が原発維持などの名目で「基本料金」を払い続けているからだ。東京電力は原電株の28%を持つ筆頭株主で、関西電力も18%を保有する。原電の延命のため電力会社が提供する資金の原資はもちろん電気料金だ。私たち利用者の知らないところで電気料金が横流しされている。

 村上前村長の言葉は反省なき原子力ムラへの警鐘だ。再稼働を止めることは、こうした究極の無駄遣いを続ける「ムラ」に反省を促し、立地地域も含めた経済の腐敗構造を変える一歩になる。
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