2017年12月22日 1507号

【みるよむ(465) 2017年12月9日配信 イラク平和テレビ局in Japan 子どもの虐待を引き起こすイラクの社会】

 イラクでは、子どもに対する虐待や暴力が増えている。2017年10月、サナテレビは、子どもたちの教育環境が悪化している現実をどう考えるべきか、その背景には何があるのかについて、市民にインタビューを行った。

 最初に登場する男性は「子どもをきちんと扱うことは地域の文化の一環だ」と主張する。イラクでは宗派主義勢力の対市民攻撃や暴力支配がずっと続いてきた。現状では、社会全体が人を教育し、必要な規律のある、暴力のない社会とはなっていない。

 この男性は「子どもに対する暴力が起きるのは、イラク市民自身の精神状態が危機にあるからだ」と指摘する。「子どもに対する暴力行為は、イラク戦争によるゆがんだ文化が生んだ当然の結果」と言うのだ。戦争から14年たった現在も、戦争と占領は市民の精神に大きな傷跡を残した。そうした社会の現実が子どもたちに暴力を振るう背景となっている。

 ある市民は「暴力とは結局は経済システムの問題に戻ってくる」と言う。たとえば、家族が経済的に困窮する中で女性が虐待を受け、子どもが暴力を受ける環境が作り出されていく。また、「宗教の国家からの分離や男性と女性の間に抑圧のない完全な平等を土台にした教育が必要だ」と主張する。

 もう一人の市民も「虐待された子どもは環境の産物だ」と説明する。子どもがたくさんいるのに一家の生活費を稼ぎ出す働き手がいない。地域には暴力が広がっている。こうした状態では、子どもに対する暴力もなくならない。子どもたちは「現実の犠牲者、社会の犠牲者、経済の犠牲者」である。子どもを保護する法律がなく、政府はまったく無策という中で、イラク社会の問題が子どもに集中的に表れている。

 日本でも、グローバル資本のつくり出す格差拡大や差別選別の中で、経済的精神的に追い詰められ、子どもが暴力や虐待の被害にあっていく構造がある。

 イラクの子どもたちが受けている暴力や虐待は、経済状況の悪化や高い失業率、暴力と宗教による支配の広がりなど、社会の深刻な状況こそが最大の原因だ。

 サナテレビはこの現実を伝え、公正で豊かな社会に変えようと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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