2017年12月22日 1507号

【介護問題を考えるつどい 尊厳ある暮らしを守る 大阪 安倍の高齢者棄民に地域から一つ一つ反撃】

 11月26日、大阪府枚方市内で「介護問題を考えるつどい」が開催された。安倍政権が進める介護政策は、「医療費適正化」と「自立」の名の下の介護切り捨てであり、高齢者の棄民政策と言ってよい。つどいでは、利用者の尊厳ある暮らしを守るため、地域での取り組みを強め自治体に独自施策を要求していくことが確認された。

公的責任放棄し丸投げ

 つどいでは、西宮デイサービスつむぎの家の畑広昭さんが講演。要旨を紹介する。

 政府の進める改悪案は、安倍の軍拡と徹底した社会保障費の削減の下、国と自治体の公的責任をあいまいにし、医療と介護から利用者を排除して地域に丸投げする棄民政策だ。介護分野においては、利用者の介護保険外しと負担増を行おうとしている。介護保険利用料を2割から3割(年収383万円、18年8月から)負担に増やす。2割負担の導入(15年)で対象の4割が利用を抑制しており、さらなる利用抑制につながる。また、18年度からの移行は世論と運動により延期になったものの、要介護1・2の人に対する介護保険サービス提供を取りやめ、保険制度ではない自治体総合事業への移行が狙われている。介護認定者全体の3割を占める要支援認定者は、すでに17年度から自治体総合事業へ移行。改悪されれば、全体の3分の2の対象者が介護保険から外れ、給付費用は約4割もの削減となる。

 政府はこの流れに拍車をかけるため、安倍首相が座長の未来投資会議で「自立=介護からの卒業」「科学的介護」を打ち出した。介護度認定を厳しくして要介護度を引き下げることを自治体への財政的インセンティブ(目標達成のための優遇措置)で強要し、介護ロボットや混合介護などを事業所に奨励して大資本が介護に参入しやすい仕組みを作るものだ。その結果、これまで地域で介護を担ってきた小規模事業所は淘汰される。介護現場では自立支援が自己目的化され、要支援1の方が要介護5へと重症化した大阪府大東市の実例のような結果を招くことになる。

 最後に畑さんは、「尊厳ある暮らし」をキーワードに、介護保険に占める国庫負担(現在25%)の倍増要求とあわせて、行政の主導する「介護からの卒業」プランに反撃し、自治体の施策を変えていくことが重要と締めくくった。

同じでも要介護5が4に

 つどいでは実態の報告や交流が活発に行われた。

 小規模事業所からは「介護認定が低くなった。全介助の人が、医師も認定調査員の意見も前回と同じなのに落とされて要介護5から4。また、要介護1の人が要支援2に。行政は、介護度の割合目標を決めてその中に当てはめている」と自治体の介護度認定の切り下げを批判。認知症の会の方は「妻が認知症で、費用はかかるが援助はない。介護は置き去り。『死ぬしかない』と介護殺人を考えた介護者は7割いる。事業所の人手不足でなかなか来てもらえない。職員の賃上げも必要。どれも金。一丸となって取り組むことが必要」と訴えた。

 京都府向日市議の杉谷伸夫さんは「10年来ほぼ寝たきりの方が、良くなっていないのに要介護度が5から4に下がった。担当課に行き抗議し再度調査させ、もとに戻させた」と攻撃を突破した事例を報告。枚方市議の手塚隆寛さんは「維新の議員は要介護認定を減らせと言っている。また、自治体職員も現場を知らない。地域のことがわかる自治体職員を配置させ、実態をつかんで支援体制をつくることが必要」と指摘した。

自治体の独自施策を

 自治体の独自施策の必要性も明確になった。畑さんの「介護は地域社会を支える地場産業。自治体は、利益追求の大手ビジネスでなく一人ひとりに寄り添う事業所の支援策を」との提起に、保育士支援と同様に人件費や家賃補助を要求すべきとまとめられた。

 利用者の負担軽減へ自治体独自の利用補助を行なわせること、介護度認定切り下げには向日市の事例のように一つ一つ反撃していくこと、そのため自治体当局に地域の実態を突きつけ、議会の場でも実態に基づく要求を質問していくことが確認された。



 
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