2017年12月29日 1508号

【多発する子ども甲状腺がん/日弁連が被ばくの院内学習会開く】

 日本弁護士連合会は12月6日、衆院第一議員会館で院内学習会「多発する子どもの甲状腺がん〜福島県民健康調査はこのままで良いのか〜」を開いた。「3・11甲状腺がん子ども基金の活動から見えてきた問題点と解決策」と題して同基金の崎山比早子代表が報告した。

 基金から療養給付金を支給された対象者は福島県内75例、県外30例。うち67世帯にアンケート調査を行い、回答のあった52世帯の意見を発表した。多くのがん患者・家族の声が表に出るのは初めてで、きわめて重みのあるアンケートだ。

 福島県県民健康調査検討委員会の見解「放射線の影響とは考えにくい」について、肯定的意見は15%で、70%が批判的意見だった。理由は「最初から『影響とは考えにくい』の説明ばかり」「甲状腺がんが多く見つかっているのにそれを異常と思わない神経がおかしい」「1年後の検査でなかったものが、3年目でがんが発生した」。多発の原因から目をそらす福島県への批判は強い。

 過剰診断との見解に対しては、「“死に結びつかないからいいでしょう”? そんな言葉を自分の大切な人に言えない」「息子は自覚症状がない5oのがんでリンパ節に転移していた。検討委員会は患者数を少なく発表したいからか」「『過剰診断』で甲状腺を摘出されてしまった(とするなら、それが本当なら)障害に対する賠償はどうするのか示せ」。怒りと行政不信の声が上がっている。

 基金の給付金支給の対象者が県民健康調査のがん患者にカウントされていないことが新たな事実として発覚した。2次検査の段階ですぐに細胞診をせず“経過観察”とされた子に、民間医療機関の検査でがんが発見されたものだ。福島県は、県立医大の検査システムから外れた子どもたちは保険での診療とし、追跡調査を行っていない。また、県は4歳児以下では発症しないと言っていたが、給付金支給の対象者から4歳以下の子どもの甲状腺がんが発見されている。

 「甲状腺検査の対象年齢や頻度」の問いでは、「拡充したほうがよい」が17人、「このままでよい」が28人で、縮小を望む人はゼロだった。原子力ムラの学者たちは「個人の被ばく線量や影響の情報を知らされることが当人・家族の精神的負担になることを認識し、知らない権利への配慮が必要」と検査の縮小を唱えるが、「早期発見できてよかった」という当事者の声こそしっかり聞くべきだ。

 105例の中にはアイソトープ治療が13例あり、福島県内が75例中2例に対し、県外は30例中11例と高い比率だった。県外の30例は、北は秋田から南は静岡までの範囲に広がっている。崎山さんは「検診を行っていない福島県外では、自覚症状が出てから受診するため、進行例が多くなっているのではないか。プルーム(放射能雲)が通過した地域は検診すべき」と見る。

 国は「福島県外の近隣県では有識者会議がもたれ、『特別な健診は必要ない』とうかがっている」(12月1日環境省)から、取り組むことは考えていないという立場である。

 「いま不安に感じていることはあるか」の問いには、77%の40人が「ある」と答えた。再発・転移の心配が強く、女性は妊娠・出産への不安を上げている。崎山さんは「今後の経過を追う上でも、被害者全員に健康手帳の配布が望まれる」と訴えた。

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